水槽の温度を下げる仕組みを作ってみる(その1:構想・設計編)

そろそろ夏がやってきます。もう夏至は過ぎたので暦の上では夏も後半戦というところでしょうが、実際には梅雨が開けてから本格的な夏になり、10月くらいまで暑さが続くことがこの数年間の夏のパターンでした*1

さて、我が家ではペットを飼っているのですが、何年か前にゲームセンターのクレーンゲームの景品として獲得したウーパールーパーもそのひとり(一匹?)。最初は5〜6センチくらいのかわいいピンク色の小動物でしたが、かれこれ4年。ずいぶんとデカくなりまして。50cmを超えるとも思われる、ピンク色の巨大生物になってしまいました。おそらく彼(名前は「うぱ夫」です。オスかどうかはわかりませんが)の夢はゴジラにでもなることなのではないかと最近思うのです。

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この子はカメラ目線をくれない子なんです。昔から。

ウーパールーパーの夏、メキシコ(高地)の夏

ウーパールーパー、学名はメキシコサンショウウオ

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もともとは学名の通りメキシコ(メキシコシティ)原産、なのですが、実はメキシコシティという場所は標高が高い場所にあり(メキシコ盆地の標高はおよそ2,200mくらいだそう)、気候区分的に言えば「熱帯高山気候」という区分、年間の気温はだいたい同じくらい(最高20〜26度、最低5〜13度)、朝晩の寒暖差が大きい、という気候、そんな所で生まれた子*2だそうです。

去年(2018年)の日本の夏は暑かった

さて、日本にも多少地域差はありますが、私の住んでいる東京を中心にした本州では、夏は暑く冬は寒い、四季がはっきりとわかる気候です。気候区分では温暖湿潤気候ですね。学校で勉強した記憶があります。だから夏は暑い、のですが昨年2018年は、東日本では気温の統計を取り始めてから(戦後の1946年から)最も夏の気温が高かった、という記録が残っています。熱中症で運ばれた人の数も多かったと聞きます。

ウーパールーパーにとって日本の夏は厳しい(はずだ)

ちなみにうちではヨメの責任でウーパールーパーの飼育をしているのですが、少なくとも夏の暑い盛の平日の昼間には水槽の水温チェックをするようにヨメから仰せつかっており、水温が高ければ氷や保冷剤(あらかじめ準備してある)を投入して水温の上昇を防ぐようにしています。とは言え毎日午後になると*3氷を入れに行くのも仕事をしている立場としては効率を損ねる行為でもあるし、ヨメとしても「動物の世話」という点であまり私を信用しているようには見えず、「であれば自動で水温を下げる(または一定に保つ)仕組みを作ってしまえばいいじゃない」、という謎理屈を展開したところ、なぜかヨメが大賛成、「ぜひとも作ってくれたまえ」、と(もちろん資金援助などはありませんが)プロジェクトを立ち上げることになりました。ちなみにそれは去年の話。

水温を下げる方法についての考察

水槽に入っている水の温度を下げるための方法はいくつか考えられます。

氷(またはあらかじめ冷やしてある保冷剤)を投入する

まぁ安直なやり方、というべきでしょうかね。冷却という行為としては、水槽の中の水に氷なり保冷剤なりを投入することによって、それらの物体が水槽の中の水の温度を奪う(代わりに氷は溶けてそのまま水槽の水になるし保冷剤はただ溶けてしまう)、という理屈です。簡単かつ効果的ではありますが、氷なり保冷剤なりが溶けてしまった時点で冷却効果は消滅するので、一時的(もしくは緊急避難的)な使い方です*4

水の気化熱を利用して冷やす

水槽の水に直接風を当てることによって冷やすという方法です。水は100度になると気体(水蒸気)に変化する、というのは学校で習ったことですが(沸騰)、実は水は100度にならなくても、常温でも「蒸発」をして気体になることがあります。洗濯物が乾く理由は洗濯物に含まれている水分が蒸発して乾くわけで、日に照らされて洗濯物が100度を超える高温になったわけではありません。その「蒸発」をする際に周りから熱を奪うという性質を利用して、風を当てることで水槽の水の蒸発を促すというのがこの方法です。扇風機、またはファンが一つでもあればできるというお手軽さではありますが、「水質の変化」という点ではあまり良い方法ではないかな、とも思います*5

水槽の水そのものを冷やす

蒸発もさせない、氷で薄めない、という2つの制限は実はヨメからの厳命でもあります。私はあまり詳しくないのですが、要するに飼っている水槽の水は「作っている」ものであり、中にいる生体にとって好ましい状況である、というのが彼女の言い分です。したがって、できるだけ水の状態を変化させることなく水の冷却をしたい、というのが理想、なのですが、水槽を冷蔵庫に入れるわけにもいきません。温めるのであればサーモスタットのようなモノをぶち込んでおけば勝手に温めてくれますが、その逆の作用をするもの(ぶち込んでおくだけで勝手に冷やしてくれるナニモノカ)は存在しません。 でも、水槽の水そのものを冷やす方法が思い浮かべばよいわけです。

PCの冷却の仕組みを応用する

PCの中でもCPUやGPUなどの集積回路系は計算を行うことで発熱してしまい、しかも高温になると機能が停止、または機能しなくなる(破損する)ことも起こってしまいます*6。そこで、CPUやGPUには冷却装置を装着しているのですが*7、その中で「ペルチェ素子」を使った冷却というのが効果が高いと聞いたので、せっかくの工作ですので採用してみようと思います。

設計

ではまず設計から。

基本設計

「ペルチェ素子」なるものを使うのですが、電気を通すと片方の面が冷たくなり、もう片方の面は熱くなる、という性質を持っています。詳しくは下記リンク(Wikipedia)参照のこと。

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冷たくなる面を水槽、または水槽に取り付けられたろ過器(よくある「外掛けのろ過器」)に取り付けて、熱くなる方には冷却のためのファンを装着する、という、CPU冷却と全く同じ原理を採用してみたいと思います。ちなみに、最初の設計では、水槽ではなくろ過器を冷やすことを考えています。「冷却器が同じ効率であるならば、体積の小さい方を冷やすほうが効率的であろう」という仮説をたてているからです。

冷却の制御について

実験をしてみないとわからない、というところですが、冷却の効果が高すぎるようであれば、それはそれで別の問題も発生しそうです。考えられるのは水槽の外側に大量の結露が発生する可能性です。日本の夏の特徴は高温多湿。暑い夏の盛にキンキンに冷やしたグラスにこれまたキンキンに冷えた液体(ビールでも麦茶でもいいんですが)を入れ、少し経つとグラスの表面に大量の水滴が付いていますが(結露)、これと同じことが起こる可能性を考えると、冷却効果が強すぎた場合にある一定のしきい値を設けて冷却をストップするということも考えていいと思います。もちろんずっと冷やしっぱなしにすることで電気代もかかるのでそれを防ぎたい、という目的もあります。

冷却状況のモニタリング

もはや「趣味のレベル」ですが、もし温度が高くなったりしたらアラームとか、その結果を外出先でも見られたら、とか、そういうこと好きな人いますよね。私のことですが。もちろんそれだけじゃなく、気温と水温との相関関係や天気とかそういうのとの関係とか、なんかそういうのがスマホで見れたら嬉しくないっすか? もっと言うと、そういうことをやっています、という引きこもり系エンジニアのダンナが会社員のヨメに対してアピールをすることができる、ということにもなるわけです。少しくらいは晩酌のお酒のグレードが上がるかもしれません。

材料集め

まずは基本となる部分からですが、 - ペルチェ素子 - (ペルチェ素子発熱側の冷却用)CPU/GPUファン - (ペルチェ素子冷却側の放熱板?としての)金属の板 - 電源 この4つをつなげればいいわけです。 そして、冷却の制御用としては、 - Arduino(ラズパイという手もあるが最終的にはここをESP32とかで置き換えの予定) - 温度計各種(気温、水温、冷却機構そのものの温度などを計測/モニタリング) モニタリングがいつでも可能、という機能を作るためには、これらに加えてデータの蓄積や呼び出しのための仕組み(ESP32などで取得したデータをラズパイなどで作った集積サーバに集め、それを表示させる仕組みを作る、という流れ)が必要になるでしょう。何年かかるやら...。*8

とりあえず買ってきた

まずペルチェ素子はアキバのパーツ屋で買いました。千石だったかなぁ。2種類買っていますが、電圧が3V用と5V用の2種類です。このプロジェクト用にはとりあえず3Vを使う予定です*9

CPU/GPUの冷却ファンは冷却のためのブロック付きのものをジャンクで購入。別にCPUとかの規格がどうとかないので、適当に。サイズが小さいですが、まずはこれで機能するかどうかのテストです。機能しなければ大きいのを買うしか無いわけで。

金属板はホームセンターで調達。厚めのものが欲しかったので、結構あちこち探し回りました*10

電源ですが、一旦ジャンク屋で購入したPC用電源を改造したものを使おうと思っています。ただ、ジャンク屋で(と言うかジャンクの)電源を買うと「ハズレ」の可能性があるので要注意です。使えるのに当たるといいですね>俺。

他にもArduinoやESP32は自宅にある在庫を使えばいいのですが、問題なのが「水温計」です。水温を測るためにはどうすればいいのかな。気温だとセンサーは空気中に置いておけばいいので何も考えなくてもいいですが、水温計として使うのであれば絶縁が必要なの?とかいろいろ考えちゃう。モノが存在する気もするんですが、結局どうやって使うんだろう、とか、とか、とか*11

ということで今回はここまで

妄想もできたしパーツも揃ってきたし。あとはこのパーツをどうやって組み上げるか、ですかね。シリコングリスとネジ、アングルが必要になるだろうし、ろ過器への接触部分についても検討が必要ですかね。

さて次回はどうしましょう

とりあえず基本設計をもう少し練って、実際に作ってみて、効果が得られるのかどうかの実験までできたらいいですね。

*1:今年2019年に関して言えば、ここ数年間の暑さに比べればまだ涼しい方ではないかとは思っているのですがどうでしょうねぇ。

*2:日本の市場に出回っているウーパールーパーのすべてが日本生まれだそうですが、まぁ日本生まれのメキシコ人(うぱ)、ということにしておきましょう。

*3:科学的に言えば、水は温まりにくく冷めにくいという性質があるので、朝の段階では水温は総じて低め、午後の最高気温のピークになっても、更に水温は上昇の可能性があり、気温が30度を超えた期間が数時間も継続すれば水温も30度を超えるであろう、という推測のもと、ということですかね。

*4:水槽の中の生体(ウーパールーパー)にとっても、例えば氷が溶けて水になることで、水質の変化が起こりうる、という点ではベストな方法とは言えません。ウーパールーパーが淡水に住む両生類なのでそれほどの問題ではないとは思いますが、海水で生きる生物の場合は氷をそのまま投入すると塩分濃度が変わってしまうという問題が起こりえます。

*5:氷が水を薄めるのに対して、蒸発を促す行為は水を「濃く」してしまいます。仮に水の中に有害物質がごく少量含まれていたとして、水を蒸発させてしまうとその有害物質だけが残ってしまうという可能性があるわけです。淡水・海水のいずれにしてもあまり良い方法だとは考えにくいです。我が家ではこの方法は採用していません。

*6:余談ですが、昨年の猛暑で1台PCが死んでしまいました。よりによってMac Miniでした。それが現在やろうとしているPCラックの構想につながっています。

*7:冷却装置の仕組みについては何種類かあるのですが、今回は説明を省きます。ググっていただくなり「自作PC」の書籍でも買って読んでいただければ。

*8:まぁ、うぱ夫が死ぬまでにはなんとかしたい、と思っているのですが、どうやらウーパールーパーの寿命は思っている以上に長いらしいです。10〜20年かぁ...。俺のほうが先に逝ってしまうかも...。

*9:5Vは別の用途で使いたいのですがこれはまたいずれ...。

*10:実際にはちょっとした機会を見つけてホームセンター巡りをしていてやっと見つけた、的な感じ。構想から1年近くかかりました。

*11:結局その「モノ」を買いました。安かったんで。