小ネタ:「チャットツール」の提案について

実はあるスタートアップ系のクライアントさまのコンサルティングをしているときに、ふと「この会社、コミュニケーションが取れてないなぁ」と感じて、いわゆるコミュニケーションツールとしてSlackを提案したのですが、その会社にいたインターンの子に鼻で笑われましてね。「Slackて(プゲラ」みたいな感じで。

さすがに若干イラっとしたんで「なんでSlackダメなの?」と聞いてみたら、実はその子が社内ですでにLINEを提案済みだったということが判明したんです。だったら最初からそう言えばいいのに、なんで人を小馬鹿にしたような態度をとるかなぁ、とは感じましたがまぁそれはどうでもいいんです。

総論:業務で使うチャットツールの原則

その後話をツッコんで聞いてみたのですが、LINEの提案をした理由+Slackを提案しなかった理由は、「大学のゼミでコミュニケーションツールとしてSlackを使うように指示をされたのだが結局使われなくなり、代わりに自分たちのLINEグループで完結したため」だそうで、LINEは使いやすい、Slackは良く分からない、という理由でLINE提案としたようなそぶりでした。

提案を持ちかけた私としては、「コミュニケーションツールとして使ってもらえるなら何でもよく、プラットフォームにこだわりがないのでLINEでの提案があるならそのまま提案すればよい」と彼と会社側に伝え、私からの提案は行わないようにしたのですが*1、正直、提案のきっかけから内容に至るまであまりにも安直すぎて、これはその会社の人たちに使ってもらうのは難しいかな、と感じてしまいました。ざっと私が提案をしようと思っていた内容とインターンの子が陥っているワナについて書いておきます*2

原則:使うこと

まず、チャットツールを使うことが大切です。使わなければ使わないのです。なにを言っているのか、と思うかもしれませんが、「使う」と決めたらコミュニケーションの手段の一つとして必ず「使うこと」を決まり事として掲げる必要があります。

なぜインターンの子がSlackではなくLINEを使うことを選んだのか。これは普段の大学生同士のコミュニケーションがLINEを多用/メインのコミュニケーション手段として使っていたからではないか、と考えられます。だから、自分たちの中の「決まり事」としてすでにLINEを使っているにもかかわらず、他のツール(Slack)を使え、と言われても、すでに決まり事が決まっている中で使われることがなかったのではないか、と推測されます。

提案として、プラットフォームを何にするか、ということを考える前の段階の話です。インターンの子は自分自身の経験としてLINEは「あたりまえ」のツールであり*3、だからこそ「LINEは誰でも使っているのだから、『使えない』はずがない」という前提で話を進めているなぁ、という印象はとても強かったです。

原則:使い続けること

そして、使い続けることも大切です。そもそも、コミュニケーションを取り続けることが大切、という意味でもあるわけですが、できるだけ同じツールを使い続けて、コミュニケーションを取り続けることがツールを使い続ける理由です。

私はいまだに、なぜLINEが(日本における)メッセージアプリ/チャットアプリのデファクトスタンダードになったのか、という理由がわからないのですが、理由はともかく、LINEはスマホにおけるメッセージアプリのデファクトスタンダードであることは間違いなく、スマホを持っていれば誰でも使っているという状況であることは間違いないと思います。「いや、LINEなんてよくわからないし使ってないんだよね」、と言う方が少なからずおられることは存じております。が、意外と家族は使っていて「既読スルーが~」とか、「子供には使えと言われていてね」とか、使えていない、という人の言い訳としてよく聞くパターンです。

前項の繰り返しになりますが、そういう意味で利用障壁が低い、という「理解」のもと、LINEを提案したという大学生の考え方は分からなくはありません。理解はできますが、実際に「LINEは入れてるけど使ってないんだよね」という方の立場には立てていないですし、おそらく使えない理由*4は理解していないまま、「自分が使い続けているのだから誰でも使い続けられるはずだ」という前提で話が進んでいるように思えました。

原則:使い続けても問題がないこと

もう一つ、最後の原則ですが、使っている最中にアプリが落ちてしまったり、メッセージの内容が消えてしまったりという状況が起こらないことは、少なくともビジネスでの利用をする場合には大切なことです。そして、大学生の提案にはこの観点が実は大きく欠けています。

LINE(グループ)もメッセージの保存機能があるから大丈夫、とおそらく思うかと思います*5。いや、そっちじゃないんです。メッセージの保存はもちろん必須なんですが、それ以前の問題として、LINEの場合はグループスレッドは1つしか存在しないため、グループの中であるメッセージが「流れて行ってしまう」という問題が発生します*6

LINEを使い慣れていて、LINEがコミュニケーションツールのメインとなっている今どきの大学生にとっては、メッセージをスルーすることは基本的にありえないわけで、ビジネスでの利用を想定する場合でも、ある人が発したメッセージに対して明確な意思表示をきちんと行う使い方ができるのであれば問題はないのですが、『大人の世界』では、結構な確率で明確な意思表示をされないケースが多いわけです。「今はその判断はできない(3か月後なら判断できる)」「今はその時期ではない(でも6か月後には状況は変わっているかもしれない)」ということから、仮にそのメッセージを送ったとしてもすっかり忘れさられていてビジネスチャンスを失うことにもなりかねないわけです。

だから他のビジネスで使われているチャットツールは、「スレッドを立てる」ということでその話題を残すことが容易になるように作られているわけです。

ちなみにこれは「LINEを使えない大人」が使えない言い訳としても使っていることだったりします。「今すぐレスをする」、という行為は実は大変労力を使うわけですが、「大人の世界」では今すぐ決めなければいけないことはそれほどなくて、むしろ積極的に、しかも良い形で「先送り」を行うんです*7。例えば昨今の例で言えば、屋内イベントの開催を検討するにあたっては、コロナウィルスの蔓延状況だけが判断材料になるわけではなく、イベントを開催するにあたって用意する何らかのものの準備ができるのか(例えばおにぎりの納品ができない、みたいな話)、とか、パブリックイメージだったりとか、はたまたお財布事情が関係してきたりとか、複雑な要因が絡んでいたりするわけで、それを即返事をして決めろ、というのは難しいはずです。チェーン店の居酒屋の予約を入れるのとはわけが違うんです。

そもそもの話ですけどね

「提案」というもの自体いろいろと種類があるわけですが、現状がどうであれ「こういうことをしたらよいかもしれない」という普遍的な提案と、現状を見たうえでの「御社の現状から考えたらこうすべき」という個別提案の2種類にわけられると思っているんですが、どうやら普遍的提案をたくさんすればいい、とでも思っているのではないかな、と思う節のある人たちが多い気がして仕方ないです。

ただ、そういう提案をしているという声が多く、結果私に仕事が回ってくる、という言い方もできるんですが。イイ事なのか悪い事なのか...。

*1:インターンの子の顔も立てる必要がありますからね。

*2:コンサルやる人から見たら当たり前という話だと思っていますが、後でも述べている通り、そういう提案を平気でやる人が多いんですよね、いわゆるコンサルの人でも。

*3:「一般的」ですらなくて、使うことが当たり前になっているツールです。

*4:使えない、のではなく、面倒だから、と言うのが普段使いのLINEの「使えない」理由だったりします。次の項で説明をしますが...。

*5:メッセージ保存機能の実装、最近になってからですけどね。

*6:対策がないわけではなく、話題スレッド単位でグループを作ればいいんですが、オペレーションとしてはちょっと面倒です。ビジネス系のチャットツールのスレッドの方が便利だとは思うんですがね。

*7:もちろん度が過ぎる「先送り」も横行しているのですが。