こんな記事を読みましたよ、というご紹介と、タイトルの意味するところについて思うところがありましたので考察を。
記事概要
私自身は半分趣味でブログを書いているので*1、この記事の作者さんの本業(ライター)とはあまり関係ないのですが、どうやって稼ぐか、というセルフマーケティングの観点では参考になる記事も多く、すべてではないもののかなりの記事を読ませていただいています。
で、今回の記事、相変わらず私の拙い抄訳+解説で恐縮ですが、「どうやって『将来性のある』顧客を探すか」という記事タイトルで、内容自体は「新規顧客を掘り起こすための方法」について、産業系ライターという仕事を例にしたやり方を紹介しています。
既存顧客リストの作成(棚卸)
既存顧客のリストを作ります。
- 現在取引のある顧客だけでなく、過去に取引があった顧客もリストに含めます
- 過去に取引があり、現在は別の競合他社と取引をしているのであればその情報を記載します(わかる範囲で)*2
- 過去取引には至らなかったものの問い合わせ等の引き合いを行ったことのある会社もリストに含めます
- 問い合わせを行おうと思っていてなかなか行動に移せていない会社もリストに含めます
- 友人知人などの自分自身が持つネットワーク内にいる顧客候補もリストに含めます*3
そして、それぞれの顧客リストに下記項目を加えます*4。
- 会社等に対する専門家のレビュー(クラウドソーシングなら全体評価など)
- 企業ランク(複数のランキングがみられるならそれもよい)
業界の情報を読み深める
リストを作成すると(産業ライターさんの場合はそうしなくてもおのずと)自分の専門としている分野が見えてくるので、その業界情報を手に入れます。書籍でなくともオンライン版の記事を読めばいいです。必要があれば記事の購読も検討しましょう。
また、専門分野とする業界のニュース記事や広告もチェックします。自動車業界であれば、新車の情報であったり世界のEVに関するニュースなどでしょうか。広告もライティングのアイデアとして使える情報です。
先に作成した「顧客リスト」の中から、今集めた業界情報を見ていて「ここに声をかければいい提案ができるかも」と思った企業に対してアクションを起こします。
LinkedInでの営業のかけ方
日本だとLinkedInはそれほど営業ツールとして活用されていない気もします。もしベンチャー企業がターゲットとして多いようであれば、Wantedlyと読み替えてみてはいかがでしょうか。
LinkedInには検索した業界情報を定期的にメールで送ってきます。私のところにも毎週くらいのペースで「求人」という形で配信されているので、時間があればチェックしています*5。送られてきた企業の情報は、いうなれば『相思相愛』なわけです。自分もその企業の仕事をしたいし、企業側も自分のような仕事をしてくれる人を求めている、と。
このままLinkedInを使ってコンタクトをするのではなく、いったんGoogleなどの検索エンジンで企業の情報を検索して「本当に」この企業で働くことが問題ないかを最終チェックして、問題がなさそうであればLinkedInでの企業担当者へのアプローチを始めます。
この時に注意しなければいけないのは2点。
- 担当者へのアプローチは複数名(2名程度でOK) *1名のみでは企業へのリーチができない可能性があるから
- 「肩書」に注意 *具体的な「肩書」については書きませんが、できるだけ決定権者に近い肩書を持つ人を選びます
実際の肩書を記載しても、必ずしもその人が権限を持っているのかどうかはわからないのですが、一般的に(私もそう思う)こんな肩書の人には権限はあまりない、と考えてもらって大丈夫です。
- 〇〇スペシャリスト(専門職なので決定権者からは程遠いことが多いです)*6
- オペレーター、アナリスト(基本的に現場仕事をしている人たちの肩書です)
- 役名のないマーケティング担当(デジタルマーケティング担当とか、マーケティングAI担当とか。これも現場担当の方が多いです)
- 「ディレクター」系(現場担当というか、現場統括レベルの役職の方が多いです)
*『マーケティングアナライズディレクター』という肩書が例に出ていましたが、要はマーケ分析部門の統括主任くらいな感じでしょうか。リーダーとかそんな感じ。
- 実際の例では『マネージャー』という肩書はOKとされています。課長~部長職クラスでこの肩書がつけられることが多いです。あまり肩書が長すぎず、かといって短すぎず、というところが私的なねらい目ですが。
選んだ方たちに営業メールを送れば、何らかの反応が返ってくるはずです。
結局は泥臭いアウトバウンド営業でした
今回ご紹介した新規営業掘り起こし方法は、LinkedIn(などのSNS)を使う、というところがちょっと目新しいかな、と思いますが、実際の営業の現場を見ると『よくある(アウトバウンドの)営業スタイル』だなぁ、と感じます。
要点は2つあって、
- 自分の得意分野の棚卸+スキルアップ
- (業務発注)決定権者へのコンタクト
あくまでもフリーランサーのやり方、というところですが、これを一般的な企業の営業に置き換えると、
- 自社商材の理解と「強み」の理解
- どうやって「決定権者」と話を進めるか
という、二つのテクニックが必要ですよ、ということになります。
特にフリーランサーの場合は、自分自身の商材がなんであるかは『一応』理解をしているはずですし、専門分野の有り無しは受注確率に影響を及ぼします。業界未経験の未経験ライターさんが受注できないのは、業界未経験だから、というのが主な理由です。仮にライティングが未経験でも該当の業界で長く働いていた、という場合は業界について詳しいので、ライティングのルールさえ教えればいいのですが、ライティング経験があっても業界のことに疎ければ記事が薄っぺらいものになってしまいます*7。
そしてもう1つの、「決定権者」とのコンタクト。これが結構難しいんです。私自身これで苦しんだことが何度もあります。一つ極端な例を挙げると、もともと私(と当時所属していた会社の役員)の知人からの引き合いでシステム開発の提案をすることになったのですが、先方企業の窓口はその知人。半年ほど前にその企業に入って社内システムの刷新を担当することになり、開発を依頼してきた、という話なのですが、いくら提案をまとめても話が進まない。提案書や費用面でのブラッシュアップは何度も行ったのですが、いつになっても契約を「する|しない」の結論が出ない。知人ですので「ちょっと外に連れ出して」ぶっちゃけた話を聞いてみると、ほかにもシステム刷新の提案をさせている企業が数多くあり、その中から私がいた会社を選んでもらえるように、という「配慮」から彼自身が提案を取りまとめていて、まだ上長への提案をしていない、ということが判明*8。結局話を進めている間に私はその会社を退職したのでその後どうなったかは不明ですが...。
提案自体がイケてるものであったとは私自身も思っていないのですが*9、私自身営業のやり方として、もっとガツガツと攻めることができたらなぁ、と大変後悔している、そして営業のやり方について反面教師として覚えている悪い例の一つです。
ちなみに今の私自身はあまりアウトバウンド営業をしないのですが*10、新規顧客の掘り起こしは必要ですし、定期的にやっているにはいますが、年1~2回程度。1年に1件新規顧客が獲れたらOK、というレベルです*11。
本題:仕事の「パイプライン」
さて。ここまでの話で一切出てこなかった「パイプライン」という言葉ですが、今回の元記事の一番最初の行に出てきます。
I’ve talked many times about the importance of prospecting for new clients to keep your pipeline full.
(記事筆者が)いつも言っているように、仕事をしている自分自身の『パイプラインからの供給を常にいっぱいにする』ために新規見込み顧客を探すことは大切なことなんです。
私の中で、仕事/案件の「供給源」としての『パイプライン』という考え方はまさに目から鱗でした。ちなみにここで言うパイプラインはこの意味ですよ。
パイプライン、例えば油田なんかを想像していただければいいのですが、ある油田からいくつかのポイントを通過したり分岐したりしながら、複数の拠点に原油を供給している*12んですが、私たちフリーランスはこの終点部にいると考えるわけです。起点である油田は?当然クライアント様です。
2020年初頭のコロナ禍第一波*13で話題になった、フリーランサーの「雇止め」問題。私自身はあの問題はわりと冷静に見ていて、「仕事の供給源が1か所しかなければ、そこが『切れた』時に大打撃を受けるにきまってるよなぁ」と思っていました。実際の事例で言えば、「フリーランスとして*14」ピアノ教室の講師を受注していた方が、運営会社である契約先からのレッスン中止指示を受け、仕事が「なくなった」というもの。ピアノ講師という特殊性のある仕事なのでこの方がどう、ということではないですが、他にできる仕事があって、そちらで「糊口をしのぐ」ことはできなかったんだろうか、と感じましたし、自分自身はそう言ったセーフティーネットを構築すべきだろうな、と考えました。事実、順番は前後しますがコロナ禍以前にIT業界の経験を活かしてIT講師の単発仕事を受注しており、これ自体は自分にとってのセーフティーネットになりうるな、とは受注当初から当初から考えていました。
何らかの理由でパイプラインからの供給が止まる可能性は否定できません。むしろ今般のコロナ禍でフリーランサーにとっては「現状のままではヤバイ」と気づくきっかけになったのではないかと思うんです。少なくとも私はそう感じました。だとすれば、その「パイプライン」を複数持つこと、そしてパイプライン終点として、常にタンクが満タンになっていて輸送に忙しいという状況を作ることが必要だし、そうありたいなぁ、と感じます。
*1:残り半分は、といえば、このブログは一応集客用という位置づけにはなっています。機能してないですが(笑)。
*2:例えば、「別のフリーランスと〇〇経由で契約?」くらいでいいと思います。要は仕事の有無やクライアントの仕事の発注に関する特性がわかればいいので。
*3:友人知人を巻き込みたくない、という気持ちはわからないでもないですが、まぁ元記事は海外のものですし、そのあたりドライですよね...。
*4:顧客の評価です。
*5:ただ、正直「求人」という扱いなので、フル在宅の案件はあまり出てこないですね。
*6:私自身は最近「ITスペシャリスト」という肩書を使っていますが(笑)。
*7:それこそSEOを意識したライティングだけが得意だったりすると、記事のアクセス数は上がるかもしれませんが、その記事に価値がなければ離脱率も高くなり、サイト全体の評価も低くなってしまいます。とは言えそういうブログを運営している方たちは数多くいるんですが...。
*8:ちなみに彼の当時の肩書は「IT部門統括」だったような。そしてその会社のIT部門に所属していた人員は彼一人。
*9:もちろん提案自体はきちんとしましたし、対知人というしがらみの中でコストとパフォーマンスの両立に苦労し、どうしても十分な提案になっていなかったかもしれない、とは思うので、そういう点で「イケてない」んですが。
*10:その理由は「手間がかかるから」の一言に尽きます。本業や既存顧客との関係醸成もそれなりに忙しく、後で触れる部分にも関わりますが、既存顧客からの案件受注が少し切れそうだな、と見越したタイミングで新規営業をするようにしています。
*11:もちろん引き合い(インバウンド)もあるので、必ずしも年1件新規顧客が増えるというわけでもないです。
*12:実際には港湾などが終点になっていて、そこで精油され、または精油基地にさらに運搬される、という仕組みですわね。
*13:第二波があったのかどうかは別にして、とりあえず一番最初のコロナ禍です。