マーケオタクのボヤキ:YouTuber?

筋トレは趣味ですが、なぜこうなるのか、という記事を見つけたのでちょっとマーケオタクという立場と、趣味筋トレという立場でツッコミでも。

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筋トレは確かに男性にとって「強さ」の象徴であり、ハマりだしたらとにかく何としてでもバルクアップしたい、と考えてしまうのは当然だと思います。私自身そうですから。ただ、私の話だけをすれば、私はどうやら『ハードゲイナー(Hardgainer)』のようで、筋トレをしても筋肉がそれほど大きくなってくれないらしく、年単位でトレーニングをしていても(後で述べるように週1~2がいろいろ「限度」なので回数も少ないですが)それほどデカい筋肉を持っているわけではないのですが。

私の話を続けてしまい恐縮ですが、もう一つの要素として年齢もあります。49歳にもなるとさすがに体力は衰え気味ではあります。若い頃に比べれば全然動きませんし、仕事柄同じ姿勢をキープし続けることが多いので、筋トレの意味もバルクアップから(もちろんまだバルクアップメニューも続けていますが)ストレッチ、モビリティ、フレキシビリティ、みたいな意味合いが強くなってきました。

「YouTuberになる」ことに対する大きな勘違い

あくまでもこの記事に出てくる人たち(筋トレにハマったダンナ)は極端な例なのだろうと思うのですが、仕事的に見ても「これはどうなんだ」と思うところは数多くあります。

「先行投資」と言う名の無駄遣い

家にダンベルセットとかラックとか置けるってどんだけいい家住んでるんだ、というツッコミを本当はしたいんですが*1、それよりも「ホームジム」を作ることのコストメリットの少なさ、無駄遣いでしかないということを今回はツッコんでみましょう。

仮に通販で買えるレベルのダンベル・バーベルセットを買ったとします。ダンベル2.5万、バーベル2.5万として5万円。仮によくあるスポーツジムに通っていたとして月10000円程度の会費を払っていたとすれば、ダンベルバーベルセットを自宅に購入設置すればジムに行かなくてもよくなる「はず」なので、ジム代は5~6か月もあれば回収は可能、と考えてしまうのですが、では6か月アホみたいに自宅で筋トレをして、仮に自分の求めている姿になれたとしますが、おそらくその体型をキープしよう、ということにはならないはずで、「もっと鍛えてもっとデカく/美しく」と考えるはずなのです。そして、そうするためには今家にあるセットでは足らないはずなのです。さらなる追加投資をしなければならないか、家に置くことができなければやっぱりジムに行くか、という選択を迫られます。もしジムに行くとなれば家にあるセットは不要なのですが、だいたい汗まみれ脂まみれで売り物にならず、引き取ってもらえたとしても二束三文、引き取り手がなければ物干し竿の代わりになってしまいます*2

結局投資に見合う効果は得られることもなく(しかもダンベルバーベルセットだけだとしたら背中のトレーニングが若干薄くなりますからバランスも多少悪い)、追加投資か不良資産のいずれか(またはゴツイ物干しざお)になるのが関の山、ということになります。

「Youtuber」になったダンナ

筋トレとか以前の問題で、Youtuberになりたい(Youtuberになってお金を稼ぎたい)という人はたくさんいるわけで、ちょっと鍛えてみたらいい感じだからYoutubeで筋肉見せながら語っちゃおう、なんて甘い考えだと誰もが(奥さんたちはおそらく全員)思うでしょうが、筋トレをやっている人たちの中で一定量いるナルシスト系の人たちはちょっとでも筋肉ができるとすぐに他人に見せたくなり、それが金になるかも、と思ってしまうわけです。

そして、Youtuberのビジネスモデルを理解しておらず、単に動画再生時の広告だけが収入源になる、と勘違いしていると、無駄にプロテインだのサプリだのを買い込んで、「はい、というわけでね~、やってみました~」的な動画を毎度毎度作ってしまうわけです。あれは必ずスポンサーがついてますからね。よく「ステマ」とか言われるヤツですが(実際にはステルスマーケティングでもなんでもなく、有名なインフルエンサーだから商品の無償提供をしたりスポンサーになっている、という、ただの「マーケティング」なんですが)、そうでもしなければ(著名な)Youtuberだっていろんなものを買って試してという生活を続けてお金がもつわけがないです。これも先行投資ですって?まだダンベルセットの方がもとが取れる気がしますが...。

「タンパク質不足」と炭水化物不足の脳が言うダンナ

たぶんそういうことなのでしょう(笑)。炭水化物が脳に行き届いていないので*3、アタマが回ってないんですね。よく揶揄される「脳まで筋肉になった」状態です。私もその傾向があるので皆さんにも許していただきたいところですが。

筋トレをするためには「筋肉を大きくするためのたんぱく質」が必要なのではなく、そもそも運動をするのでそのためのエネルギーが必要になります。だから、たんぱく質だけでなくカロリー、簡単に言うと「メシ」を食わないとトレーニングがおぼつかなくなるわけです。もちろん「バランスが大切」となるのですが、意外とPFC(Protain/Fat/Carb)バランスという点では今どきの食卓ではタンパク質の量が少ないことが多いのは事実です。特に動物性たんぱく質の場合はコストが高く、脂肪もそこそこ多いためにただ食べると太ってしまうため*4、食卓にのぼることが少ない傾向にあります。

ちなみにPFCバランスという言葉を使ったので、では最適なPFCバランスは?となるのですが、ネットで調べるとたぶん炭水化物60%、タンパク質15%、脂質25%とかいう厚労省のデータが出てくるはずですが、これも人それぞれかな、と思いますし(個人的には脂質が1/4というのはちょっと多すぎかな、と思います。6:2:2くらいか60:15:25くらい、タンパク質が1/4で脂質が少なめくらいが脂っこくなくてちょうどいいかな)、むしろ正しい考え方は、基礎代謝量に対して炭水化物の比率をそのままにしてたんぱく質をどうやって多く摂取するか、ということであって、何でもかんでも「タンパク質がぁ~」と言うのはおそらく炭水化物が(ry。

「消費してほしい」という人たちに騙されてはいけない

マーケティングをやっている人がこれを言うのは元も子もない気はしますが、いち消費者として考えると、例えば筋トレをするのにあれもこれも(食べ|飲ま|買わ)なければいけない、という理屈が正しくないんじゃないのかな、とは思うわけで、「効果をより早く実感するために」何かを足す、ということと足すことで「効果が得られる」ということをはき違えている人が多い気はします*5。筋トレはただ重いものを持ち上げたりすることが基本ですし、そのために特定のプロテインサプリメントと水分補給ドリンクがなければいけないわけではないはずです。

そんなことよりも、無駄な動きをせずに鍛えたい筋肉により負荷をかけることの方が大切なわけで*6。私の話を何度もして申し訳ないですが、今でこそ自分自身がハードゲイナーであることを自覚しているので、ほどほどにトレーニングをし、食事も多少バランスを考え、サプリはよほど必要がない限り摂ることを検討せず、(精神的にも肉体的にも)健康的な生活を送るような努力をしていますが、ずいぶん前に迷走していた頃はサプリも摂っていました。でも必要がなくなったので摂らなくなった、という感じです。不足しているなら摂るべきですがさらに多く摂りたい、というなら要らない、というのが私の考えです。食事にしても同じで、考えるべきは基礎代謝量とPFCのバランスであって、相対的にタンパク質を増やさなければいけないわけでもありません*7

「ちょい足し」というキーワード・概念は私もコピーづくりでよく使ってしまうネタなんですが、マーケター(コピーライター)の思いとしては、「ちょっとでもいいからまず使ってもらって商品の良さを知ってほしい」という気持ちを込めて使います。消費者にとっては商品をちょっとだけ使えばいいのだからお得だし、それによってなにがしかの効果が得られるわけですから、お互いにとって悪いことはなにもない、はずなんです。

しかし、実際に効果が得られるかどうかについては実は消費者次第、というところも多いわけです。プロテインを購入しただけでは当然筋肉量は増えませんし、運動もせずにただプロテインだけを摂取したところで筋肉に変わってくれるわけではありません*8。しかし、商品を売るときには、「飲めばバルクアップ」だの「プロテインちょい足しレシピ」だのと、とにかく消費をしてもらい、習慣づけるためのメッセージを流し続けるわけです。

今回は「マーケオタク」という肩書なのであえて言いますが、消費者の皆さんは意外とそういうあからさまなメッセージに騙されてしまっているわけです。悪いわけではないけれど、それが度を過ぎて、しかもその言い訳が「自分の利益につながるかもしれないから」なんて話は、どこかのネズミ講に騙されている人みたいですよね。そうなるとちょっと「目を覚ましてくれよ」と声をかけるべきだと思うのですが、そうでなくても、本当にその商品は必要なのか、本当に「ちょい足し」が自分の問題解決につながるのか*9、と常日頃考えることも大事なんじゃないかな、と思うんです。

*1:ダンベルセット」と一口に言いますが仮に1~20kgのセットとしてもダンベルだけで、1/220(20-1)2=380kg、ダンベルラックも入れたらおそらく400kg。可変式ダンベルでも40~50kgくらいはあるはず。記事内には「ベンチプレス」とありましたが通販で買えるところだと80kgセットにベンチ1個10kgとか。軽くても100kg超。ジムにあるフルセットだとこれまた300~400kgぐらいにはなりそう。置き場所も2~3畳分はどうしても取ってしまうのでどう考えても都内の普通の家では考えにくい、となるとたぶんそこそこいい家/部屋に住んでるんじゃないかなぁ、と推測をしています。

*2:もしくは買った直後にすぐにダンナが筋トレを継続して行わないことをいいことに部屋干し用のラックと化すことでさび付いてしまう、というパターンもあるんですが。

*3:炭水化物、特にグリコーゲンは脳にとっての唯一の栄養素です。低炭水化物ダイエットやプロテインの過剰摂取をする人たちはたいていグリコーゲンが「敵」です

*4:たんぱく質は太らない、というのは運動をして摂取したたんぱく質アミノ酸が筋肉に吸収され切っている状態であれば正しいです。過剰摂取しても排出されるので問題ない、という説もあるようですが、タンパク質中心のアンバランスな生活をしていると、タンパク質が脂肪として蓄積される可能性は(栄養学的に考えれば)あるわけで、「タンパク質は太らない」というのはウソ、というか言いすぎ、曲解しすぎ、ということだったりします。

*5:もちろんマーケティング的にはそう錯覚をさせることで商品を売ろうとしていますが。

*6:何やら不可思議な動きをしてかなり重い負荷を挙げ、3~4回やったら5分くらい休んで、というジムにいる迷惑な人も多いです。長っ尻過ぎてイライラしますがいったい彼らは何時間ジムにいるんでしょうね。

*7:そうは言っても、我が家は母が普段の料理番なのですが、よく炭水化物オンリーの食事を出してきます。クリームシチュー(鶏肉2切れ・ジャガイモ多め)とかぼちゃとサツマイモの炊いたん、海藻サラダとみそ汁(野菜)、という組み合わせとか。だいたいPFCで言うと5:20:75くらいになるわけですが、これはさすがにバランス考えてほしいと思います。作った本人は「野菜中心の食事だから健康的だ」と譲らないですが。サンドウィッチマンかよ。

*8:摂取したプロテインの余剰分はそのまま排泄される、というまことしやかな噂を耳にしましたがそんなことはなく、体内で分解され、脂肪として蓄積されていきます。その証拠となるのはたんぱく質分解時に発生する窒素の化合物であるアンモニア/尿素。脂質や炭水化物には窒素が含まれないので分解しても窒素化合物は生成されないんです。

*9:減らすことが問題解決につながるケースも多いですよ、実際のところ。