小ネタ:あなたは今の仕事に満足をしていますか? - 思い出話 -

私自身は「ギグワーカー」が好きではないわけではなく、昨今の副業ブームに乗って雨後の筍のごとく現れた、周りを顧みることのない迷惑系ギグワーカーとでもいえばいいのでしょうか、まぁそういう人たちが嫌いです。

そもそも、自分自身が最初ギグワーカー的にフリーランスの仕事をやるようになり、今でもそういうスタイルを貫いているのですが、では私は「ギグワーカー」なのか、と聞かれるとちょっとそれも違うんです。フリーランサーという肩書も、洒落でつけた「アルケミスト」という肩書*1も、所詮は肩書ですし、私が何者か、といえば私なんです。

そんなことを考えていたら昔の思いみたいなものが少し頭に浮かんだので、すこしまとめてみたいと思います。

イングヴェイ・マルムスティーンとの出会い

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まぁ、まだ痩せてた若い頃にライブで一度しか見たことがないですが(笑)*2、ヘビメタにハマっていた高校時代、友人から紹介をされて聴いてぶっ飛んで、というお決まりのパターンです。高校卒業後にギターを友人から買って、そのフレットボードをインギー仕様にするべく彫刻刀で削りまくったのは若気の至りというべきか。

いきなり仕事と関係ない話から始まってしまいましたが...。

当時すでにスターダムにのし上がっていたインギーですが、彼は自分では「バンドを組む」ということをしていません。ジャズなんかでよくあるパターンですが、自分自身が「これ」と思ったメンバーを一時的に雇い入れてリーダーアルバムを作る、というスタイルで音楽作品を生み出しています。私がフリーランサーとしてこだわっているのは実はこのスタイルで、自分中心としたプロジェクトを立ち上げるとしたら、それぞれ適したメンバーを一時的に雇い入れてプロジェクトを遂行し、完了したらメンバーはまた別の誰かの仕事に従事する、というような、まさにバンドメンバーがギグバッグ一つ持ってスタジオに参集したり、ライブツアーに帯同する、みたいなイメージの仕事スタイルです。

会社に所属していた時にいつも思っていたことの一つがこの「メンバーの流動性」の難しさです。社内のリソースに限りがあるという前提を取り払って考えても、あるプロジェクトにどうしても参加してほしいと考えるメンバーがいたとしても、部署が異なるとか立場が異なるなど、とにかく柔軟性が低いことが多かったです。最近のフラットな組織を標榜するベンチャー企業さんだとそうでもないのでしょうが。

今は自分がインギーのような「バーチュオーソ(Virtuoso)」ではなく、サポートメンバーのような立ち位置ですので、あちこちの現場にギター、ではなくPCを持って集まる*3という生活をずっとしているわけですが、やっと自分のプロジェクトチームを組むことができるように最近はなってきています。

ジョン・カロドナーの逸話

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『私は私』というのを仕事でも実践できるように心がけているのですが、これはまだ若いころに「伝説のA&Rマン」と呼ばれたジョン・カロドナーが語った逸話に影響されています。彼は自分の肩書を「ジョン・カロドナー」としていて*4、自分の仕事は自分にしかできず、代わりが効かない、という意味でそうしているのだそうです。

インギーの項でもしれっと書いていますが、ジョン・カロドナーも「バーチュオーソ」なんですよね。Wikipediaだとイタリア語っぽくなっていますが...。

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唯一無二の演奏家、とでもいえばいいのでしょう。代わりが効くかどうか、という以前の問題で、あるプロジェクトをやろうとしたときに、あぁ、〇〇さんなら実現可能かも、とか思ってもらえるような職人、とでもいえばいいでしょうか。

替えが効くかどうかはともかく、「まずはあの人に声をかけてみよう」と思ってもらえることは、仕事をするうえでは大きなメリットになるわけです。受注確率は圧倒的に高くなるわけですから。もちろん忙しくて断る、ということも起こりうるはずですが、それでもまず仕事の最初期に話を持ってきてもらえるようになることはとても大切だな、と思うんです。

だからこそ、私も自分の肩書が自分の名前になれるように、IT系の企画から開発までをお願いしたいと思ったらまず私の名前が最初に思い浮かぶようになりたいな、と思っています。

昨今の「ギグエコノミー」「ギグワーカー」との決定的な違い

「バーチュオーソ」となりたいかどうか、が昨今のギグワーカーとの違いなのかな、と私自身は思っています...、というか、そのあたりが差別化要因になりうると考えています。私自身、フリーランサーなんて「一匹狼」だし、と言って偉そうに『俺は群れたくないぜ』とか言い切れるほど寂しさへの耐久度は強くありませんし、でもまぁ「みんなでワイワイ」というよりは一人で黙々と作業をする方が好きですし。

仕事を取ってきても、最近は本当に忙しくて、他人に一部仕事をお願いすることが増えてきました。ビジネスなので報酬として自分の売上の一部をお支払いして。まさにこれが私が望んでいた姿です。まだまだ先は長いですが。バンド、と言うよりはプロジェクトチーム、と言った方が今どきのビジネスっぽいのかもしれませんが、自分がプロジェクトのリーダーとなって仕事を獲得し、プロジェクトを動かし、自分も「演奏」をしながら作品を作り上げていく。私自身が作っているモノが「とても優れている」とは(謙遜でも何でもなく少なくとも今の時点では)到底思えませんが、そうありたい|あれかし、と思って日々コーディングをしています。

個人的な好みの問題というか、Uber Eatsの配達員さんたちはとにかく嫌いなのでやり玉にあげますが、「地蔵」とか言われている、店舗や店舗密集地帯のある特定の場所で待ちを決め込む配達員さんたちは、どう見ても「バーチュオーソ」とは対極にいるように映ります。自分の代わりになる人たちがたくさんたむろしているわけですし、配達する業務としては孤独な一匹狼かもしれませんが、しのぎを削るためにすることはまさに路上などで通路をふさぐようにたむろする迷惑行為だったり*5するわけです。他人に迷惑をかけてまでしのぎを削るなんて、どの世界でも通らないだろう、と思うんですが。何事かを成したい、というよりは単に「周囲を出し抜いてやりたい」という、なんか自己顕示欲を充足させているだけなのかな、と思ってみたりします*6

(CODA:)あなたは今の仕事に満足をしていますか?

満足か、と聞かれるともちろん不満だ、と答えます。まだまだ自分が至らないところもあるからこそ、なのでしょうけれども仕事も充実しているわけではないですし、仕事が充実していないから実入りも少ないし、もっともっと頑張らないと満足できないんだろうなぁ*7、と感じています。ただ、現状についてはおおむね満足しています。やり方がスマートではなかったにせよ*8、なんとかここまで生きながらえることができ、継続することができています。もっともこのことについて感謝すべきは家族ですが。

ただ「仕事をする」のではなく、『主体的に』仕事を行う、というスタイルを貫いているからこそ今の自分がいて、会社という組織に縛られないで、自由にいろんな人たち(または企業)と手を組んで仕事を遂行する、ということもできるようになった、ということについては、まさに思った通り、独立する前からずっと考えていた仕事スタイルですし、それが実現できているということに関して言うならば、とても満足をしています。特に「今どきのギグワーカーがぁ~」とか言うわけではなく*9、私自身は私のスタイルを貫いているのでそれはそれで、周りに何と言われようとも私のスタイルなのでそれでいいんです。

*1:屋号として登録をしていますが、実際にはハガレンに影響を受けているものの、自分自身が錬金術師のように0から1を生み出したいという思いがあって屋号とし、さらに肩書としても使っています。

*2:1990年、「イクリプス」アルバムのツアーだったかな。なぜか横浜文化体育館に行った記憶があります。

*3:実際には在宅仕事なのでプロジェクトにオンラインで参集している感じです。

*4:本来「A&R:ジョン・カロドナー」となるところを「ジョン・カロドナー:ジョン・カロドナー」としています。Aerosmithの「Pump」アルバム)などを見るとそうなっています。

*5:私を十分イラつかせる行為ではありますが、それよりもイラっとする、嫌いだ、と明言する理由は、とにかく交通ルールが悪いことです。割込み進路妨害は当たり前、一時停止無視やら信号無視もたびたび遭遇しています。唯一遭遇していないのは自転車や原付で高速道路に乗っている輩くらいでしょうか...。

*6:Uber Eatsの配達員を動かす仕組みとして、ゲーム性を持たせているのももしかするとそういうマインドセットの醸成につながっているのかもしれないんですけどね。配達員になったこともないしアプリも見たことないのでよくわかりませんが。

*7:その裏では、どこまで「やり切れば」満足するのだろうという底なしの不安もあるわけですが。

*8:いままでのフリーランサーとしての「私の履歴書」はいずれ書いてみたいと思ってはいますが、その辺のサイトやYouTubeなどで紹介されているような、キラキラしたものではなく、かなり泥臭く、かなりの失敗をして今ここにいる、と自分では思っています。

*9:もちろん、仕事スタイルを客観的に見て好きになれない、というのは依然としてあるわけですけど。