俺とミニマリズム

毎年恒例の「出稼ぎ」が終わり、久しぶりに自宅のオフィスにて仕事を再開。今年の「出稼ぎ」は長期出張となり、さらに昨年の「出稼ぎ」後の仕事は営業系の仕事だったので外出続きだったので、1年以上オフィスに引きこもることもなく、書類やら急がない洗濯物やら*1が溜まってしまっているし*2、部屋もなんだか散らかっていた。なので、取り急ぎ片付けておきたい残務系の業務を片付けておいてから、部屋の片付けに取り掛かることにした。

ここ最近部屋を片付けていると思うのが、「モノが多すぎる」ということ。何が多いのか、というよりも、よくわからないがなんかごちゃっとした感じでいろいろなモノがあふれている、という印象である。昔、若い頃、と言ってもいいのだが、当時はそれこそ欲しいものはたくさんあったし、カネがあれば衝動買いもしたものだが、最近は物欲も減り*3、若い頃に比べれば掃除をする頻度も増えたが、それでも片付けをするたびに「なんでこんなにモノが多いのか」と自分に呆れてしまうのだ。

ミニマリズム」という概念は20年近くハマっているし、ちょいちょいブログやSNSなんかでも「ミニマリストになりたい」とか言っているのだが、部屋の片付けをしながらもう一度「ミニマリズム」について考え直してみたい。*4

ミニマリズムとは

[https://ja.wikipedia.org/wiki/ミニマリズム:embed:cite]

この記事にもある通り、「シンプルイズベスト」であったり、「Less is more」であったり、日本文化的に言えば「わびさび」「吾唯知足(吾ただ足るを知る)」であったり、といった、必要十分なモノだけで生活するライフスタイルを「ミニマリズムなライフスタイル」と言うらしい。日本語版Wikipediaではライフスタイルにおける「ミニマリズム」について解説はないが、英語版Wikipediaでは簡単に解説がある。

en.wikipedia.org

抄訳を載せてみる(半分はGoogle翻訳を使ったが)。

In a lifestyle adopting minimalism, there is an effort to use materials which are most essential and in quantities that do not exceed certain limits imposed by the user themselves. There have been many terms evolved from the concept, like minimalist decors, minimalist skincare, minimalist style, minimalist accessories, etc. All such terms signify the usage of only essential products in that niche into one's life. This can help one to focus on things that are important in one's life. It can reduce waste. It can also save the time of acquiring the excess materials that may be found unnecessary.

ミニマリズムなライフスタイルは、自身が決めた量/数以上に必要なモノを使わないようにするというライフスタイルである。ライフスタイルとしてのミニマリズムはほかにも装飾、スキンケア、「スタイル」、アクセサリなど、派生した用語が多いが、いずれも必要不可欠なモノだけを適切な*5場所で使うという考え方である。自分自身の人生に必要なモノ(≒所有物)にのみ集中し、無駄を減らすことができる。そして余計な(余剰な)モノを探して手に入れる時間の節約にもなる。

A minimalist lifestyle helps to enjoy life with simple things that are available without undue efforts to acquire things that may be bought at great expenses. Minimalism can also lead to less clutter in living spaces.

ミニマリストライフスタイル」は、高価で入手困難なモノを手に入れることよりも簡単にに入手できるシンプルなモノだけで人生を楽しむスタイルであり、生活空間の乱雑さを解消してくれる。

他にも、「シンプルライフ)」とか言われていたりもするが、結局のところはよくわからないし、いろんな人たちがいろんな考え方で説明し(、それを商売道具にしようとしている、と考えるのは少し飛躍が過ぎるきもしないでもないが)ている。「断捨離」だの「こんまりメソッド」なんかもミニマリズムなライフスタイルの実践という文脈上にあるのだろう。

俺とミニマリズムの邂逅

俺自身は「Zen Habits」がミニマリズム・ライフスタイルとの出会いだったが、そこからアメリカの「ZEN(禅)」やスティーブ・ジョブズのライフスタイルの根底にあるミニマリズムに触れ、より「禅」的なシンプルな生き方に傾倒するようになっている。エンジニアとしては*6理路整然と教えを説く「禅」的なスタイルはとても分かりやすく、理解は容易であった。

しかし、理解はしたが、「実践」となると話は別で、例えば『同じ種類の服を数着持ち、着まわす』ということで言えば、普段持っているTシャツは一つとして同じモノ(色・柄)はなかったし*7、かと言ってそれをわざわざ買い替えるというのも違うし、という葛藤はあった。または、『必要なモノ以外は要らない』というのも、何が「必要」「不要」なのか、という判断はどうするのか、という答えは様々あり、結局どうすればいいのかが分からなかった、というのが当時の俺だった。

もちろん今は要不要の判断基準は「自分自身の中で」持っているし、服を選ぶことについてもルールが(なんとなくだが)決まっていたりするが、「過去の遺産*8」をどうするかということについては強い意識を持って実践していなかった。先述の通り、新しくモノを持つ(買う・入手する)というペースは以前と比べればかなり減ったのだが、だからと言って昔から持っていたモノは、仮に不要なモノであったとしてもそれを処分することについては(今でも)優先度が低いのである。

俺にとっての「ミニマリズム」とは

ミニマリズムとシンプルとは意味が違うとは思うが、敢えて言うなら「シンプルな考え方でシンプルに、楽に生きること」なのだろう。その考え方自体は「ミニマリズム」と出会ってからずっと実践をし続けてきたと思っている。それこそ「禅問答」ではないが、難しいことを簡単にするのがエンジニアの本質だと思っていて、簡単なことは簡単に、難しいことも簡単にする、というのがミニマリズムの本質なんじゃないか、とすら思うのだ。

ミニマルにする、というのはあくまでもシンプルに生きるための手段であって、目的ではない。ただモノを捨てればいい、物欲を減らせばいい、ということではなく、単純に*9「楽をしたい」から楽になるためのいろんなことをするのではないのか。片付けはまさにその一つだろう。そして、片付けが苦になるような状況を作ってしまうのはおかしい、だから楽に片付けできるようにモノを減らしていく、というのが本質であって、モノが減ったところで楽に生きられるわけでもない。

マーケティングミニマリズム

シンプルに生きる、という文脈だけで言うなら、「良い物」だけを周りに置くことで「シンプル」にすることはできるわけだが、その点において、マーケティングミニマリズムは相性が悪いと思っている。

まず、良いモノだけを持つことということはすなわちモノを持つ数が少なくなる、もっと言えばよほどのことがなければモノを買うことがなくなるわけで、モノを売る技術という側面を持つマーケティングとは相容れない部分が出てくる。大量にモノを売りたい(≒収益を得たい)と考える人たちとは真逆の考え方だからだ。

もちろん、良いモノを持つということにフォーカスすれば、その良いモノをより多く買ってくれればいい、ということになるが、その「良いモノ」は必ずしも高級品ではない、という問題がある。もちろん、高級品であればそれだけ長持ちする、という文脈でマーケティングをすることはできるのだが、長持ちする、ということもマーケティングにおいては、売り文句として使えるが、実際に購入頻度を考えれば必ずしもうまいマーケティングとは言いにくい。

世は飽食の時代。プロダクトもコンテンツも大量消費され、新しいモノが日々生み出され、日々消費されていく。マーケティングはそんな数多のプロダクトやコンテンツの中から、自分だけをたくさん消費してほしい(≒お金を落としてほしい)という行為、と考えていい。

そう考えていくと、マーケティングミニマリズムは、本来であれば水と油のように混ざり合うことのない概念、のはずだが、実際には*10ミニマリズムすらマーケティングの道具として使われてしまう。先述のように、「高級品」は、ステータスシンボルとして売ることができる。長持ちするかどうか、と言うよりも、それ「だけ」を持つことがステータス、という言い方である*11

マーケティング自体を否定するつもりはないし、自分自身がマーケオタクとして仕事をしている以上、マーケティングの否定派天に唾する行為でしかないわけだが、ことミニマリズムというライフスタイルにおいては、仕事としてのマーケティングに(悪い)影響を及ぼしかねない、とは思っている。

が、その一方で、もちろんこれもミニマリズムの(良い)影響ではあるのだが、その「シンプルさ」であったり、「良いモノ」であったりを訴求することができるようにはなってきている。

マーケティング自体は、「シンプルだから良い」とか、「もっとたくさん」とか、一元的に方向性を示すものでもないので、シンプルさが正解、と言うわけではないが*12、俺のテーマはあくまでもシンプルな売り方をしたい、という方向に向いている。

*1:主にジーンズなどのパンツ系

*2:まさに今日溜まっていた洗濯物を洗い終わり、書類もあらかたところだが、衣類の量がちょっと多いと思い始め、また片付けが必要になってしまいそう。ミニマリズムと言うか片付けのスパイラルだ...。

*3:マーケティングの仕事をしていると、この物欲のなさは若干悪影響が出始めてはいるのだが

*4:仕事というか「生産性」という観点で考えているが、ミニマリズムの実践編については雑記系ブログにチマチマと載せている。

*5:niche/ニッチという単語を「適切」という意味合いで略している

*6:Zen Habitsに触れた当時はエンジニア職ではなかったが

*7:今でも普段着のTシャツは変わった色柄ものばかりである

*8:まさに「レガシー」である

*9:それこそシンプルに

*10:あけすけに言うなら

*11:例を挙げるのははばかられる気もするが、ぶっちゃけ今のiPhoneはそういう売り方だよね…

*12:いつもマーケティングの例として挙げる、ドンキホーテの商品陳列は、マーケティングにおける「正解」の一つの好例だし、そういう戦略に基づいている