初心者向けのChromebookについての考察

久しぶりにChromeOSネタを書いているつもりなのですが、はてなブログ移転後はあまり書いてないんですね。旧ブログ(blogger版)でもちょこっと書いていたくらい*1

racchie-alchemist.blogspot.com

今回は実機レビューとかいう話ではなく、ChromeOS、またはChromebook*2は果たしてエントリー向けのマシンなのかどうか、「元ヘビーユーザー」の視点から紐解いてみたいと思います。

ChromeOS搭載マシンの現状について

2020年7月の時点で、ですが、私がたまに顔を出す家電量販店数社、だいたい5~10社程度のノートPCメーカーのマシンが置いてある中で、必ず1台はChromebookを見るようになったような印象を受けます。また、テレビCMでも一時期、特に3~4月くらいのいわゆるPCの需要が増える時期*3によく見たような記憶があります。

www.youtube.com

Chromebookが出たての頃くらいまでは、ChromeOSがオープンソースであったこともあり(今でもOSSですが)ちょっと非力なPCでも使えるとかいう話もありましたし、実際に私が使っていたChromebookやChromeboxは発売された当時でも2世代くらい前のプラットフォームが使われていたような話を聞いたことがあります*4。今でも最新のPCから見れば2世代くらい前であることは変わりないようですが、それでもCore iシリーズのCPUを載せていたり、メモリも(若干少なめとは思いますが)4~8GBが標準であったりと、普通の使い方をする分には申し分ないスペックです*5

よく受ける質問

先日もネットの某所にあった質問にも答えたのですが、個人的にも「パソコン買いたいんだけどChromebookは使いやすいの?」という質問は結構な頻度で受けます。CMもそうですし、ネットで紹介しているいろんなサイトを見ても、あまり悪い評価はしていません。むしろ、とても使いやすく、心配することがとても少ない、みたいな書き方で、私が使い始めたころの評価から比べたら雲泥の差です。同じ種類のマシンなのか、と思うくらい評価が違います。

それだけ進化した、ということなのかと思いきや、ネットを眺めていると「唯一のデメリット」としてだいたい紹介されている、『ChromebookWindowsMacのアプリケーションがほとんど使えません』という点はともかく、

「データはクラウドに保存する(からセキュリティ面は安心)」

Google Playでどんなアプリでも使える(から使い方は自由)」

「スペックが多少見劣りする(けれど軽快な動作)」

といった、既存のOS(Windows/Mac/Linux)との大きな違いをメリットとして*6謳っていて、誰でも使えるマシンであるかのような印象を受けます。

そこで「使いやすいの?」とか、「初心者向け?」とか聞かれるわけですが、

ChromeOS(Chromebook/Chromebox)は決して初心者向けではないし、ちょっとクセのあるマシンですよ

と答えるようにしています。

Chromebookが初心者向けでない理由

長くChromeOSマシンを使っていた経験があると、ChromeOS自体は初心者でも使いやすく、本当ならおススメしたいところがたくさんあります。

例えば、データをクラウドに保存する=ローカルストレージを使わない、という機能は、セキュリティ面では端末の持ち運び時の紛失リスクやUSBメモリ等を利用してファイルの受け渡す時に発生しうるリスク(USBメモリの紛失やウィルス感染の拡大)軽減につながりますし、そもそもローカルストレージの容量には限りがあるわけで、そのストレージを圧迫させないことでOS自体の動作が俊敏なままでいることができるというメリットがあるわけです。

ただ、WindowsMacなどの既存OSを使っている人が大多数なわけで*7、その人たちにChromebookの使い方を聞いても、概念から違うので教えてもらえないことの方が多いわけです。保存したファイルどこにある?という質問に対して、Chromebookオーナーであれば正しい答えは「ネット(正しくはGoogleドライブ)またはダウンロードフォルダのどちらか」ですし、カスタマイズが施してあればダウンロードフォルダもしくはいずれかのクラウドストレージ、となるわけですが、既存OSユーザーがChromebookを見ると、「エクスプローラー/Finderがないからわかんない」となるわけです。

つまり、自分で使い方をどんどん覚えていくことができる人であれば、「そういうOSなので」と『クセ』を伝えておけばいいのですが、そうでなければいろんな人に「これどうなってんの?」「こういう時はどうしたら?」と言ったことを聞くことになりますが、ほとんどの人がわからないはずですから結局「良く分からない使いにくいマシン」ということになってしまうのがオチ、ということになります。だから私は初心者向けではない、と断言するようにしています。

『クセ』のあるマシン(OS)だという理由

すでにクセの一つである、ストレージの問題については触れていますが、他にも特記すべきクセはいくつかあります。

アプリケーションのインストールについてはいくつか経路があってややこしいところもあるのですが*8、今回はPlayストアからのインストールという話に限定をして話を進めます。

わかりやすい例が、Microsoft Officeの導入です。Officeの中でもWord、ExcelPowerpointについてはPlayストアにも登録があり、インストールをすることができます。実際にはMicrosoft 365(旧Office 365)の契約が必要ですが、本題からは外れるのでいったん契約の件はおいておきます。で、インストールすればもちろん使えるのですが、実はこのOfficeアプリにはWindows版やMac版に比べるとかなりの制限があって、特にWindows版と比較すると使えない機能がたくさんあるために、同じOfficeの質問をしてもOSが異なるために「え?うちではこれで使えるんだけどなんで使えないの?」と言われることがあったりします。

もう一つは「ログイン」の概念です。私は普段からどのPCに対してもユーザの設定を行っているので起動時には必ず「ログイン」をしていますが、Chromebookの場合はあらかじめログインのための情報をGoogleで作っておく必要があります。いわゆる「Googleアカウント」というヤツですが、これがないとChromebookにログインすることはできません*9。ログインして使うということ自体が「クセ」ですし、そういうのを面倒だと思う人もいるのでこういうのに慣れないと使いにくいと感じるはずです。

ではなぜ世の中ではChromebook推しなのか

正直「世の中すべて」がChromebook推しだとは思いませんが、ネットで検索すると「この機種がおススメ!」だの「間違いないのはコレ!」とか情報が出てきますし、更には「初心者でも大丈夫!」という情報もたくさんあります。基本的にこういうサイトはアフィリエイト狙いなんで話半分で読むとよろしいかと私は思います。

しかし、上述のように、家電量販店の店頭でもちらほらとChromebookを見るようになってきたということは、ただアフィカスが跋扈している、という状況ではないわけです。Googleが日本市場に本格参入した(≒テレビCMの放映を開始した)というのは、おそらく海外での販売実績を伸ばすこともできたことから日本へも参入しようと考えたのでしょう。もともとは教育現場であったり低所得者層であったり向けのアピールをしていた*10のですが、徐々にChromeOSが高機能化し、ある程度見栄えのするスペックのマシンになってきたことも、スペックをわりと重視する日本市場への参入につながったのではないのかな、とは邪推ですが思っていたりします。

価格帯としてはエントリーモデルと同等、もしくはもう少し安めですし、スペック的にもエントリーモデル並というところですから、売る側としても「初心者でも手を出しやすい価格帯」というところ*11を訴求ポイントにしているのかもしれません。

最後に:私が「今」Chromebookを買うならどれを買うか

アフィリエイトをしていないブログだからこそ書ける話かもしれません。リンクを貼っていますが、リンク先に飛んでも私には一銭も入ってきません。あくまでも視点は「自分だったら」という点のみです。使ったこともないので実際どうかはわかりませんが、見た目やスペックで想像しながら書いています。

HP Chromebook x360 14 スーペリアモデル

jp.ext.hp.com

記事を書いている時点では税抜き74,800円。高いですねぇ...。これだったら普通のエントリーモデルのWindowsマシンを買った方がよくね?というくらいの、Chromebookとしては最高スペックのマシンです(Core i3-8130U、メモリ8GB、ストレージ64GB、フルHD、タッチパネル、折り畳み型2-in-1)。

開発業務をするんだったらこれくらいのスペックは欲しいかな、というレベル感です。これなら持ち運び用としても使えますし、自宅でもクラムシェルモードにしてほぼLinux状態な使い方(crostini導入とか)で開発にいそしむ感じでしょうか。同価格帯だと、同じHPのPavillionシリーズは第10世代のi5でメモリ16GBとかですので、本当にWindowsマシンでいいじゃん、というところ。みんなあこがれ(笑)のMacノートは10万円を切るノートは現在ラインナップにはなさそうです*12

Lenovo Chromebook Duet

www.lenovo.com

記事掲載時点では直販モデルだと「税込」41,738円だけど直販はもう売ってないです。タブレットタイプ、画面は10.1インチ(16:9)で、スペック的にはArm系CPU(MediaTek Helio P60T)、メモリ4GB、ストレージはちょっと多めの128GBと、お手軽感があるマシン。見た目もツートンカラー*13で、色は選べないんだろうなぁ。LenovoというかThinkpadのエンターキーとか電源スイッチとかの色ですよね、あの背面の青。

以前Chromebookを使っていた頃にずっと思っていたことが、「このOSってタブレットにしても使いやすいだろうになぁ」だったのですが、当時はAndroidタブレットをまだ積極的に売っていた頃でしたし、Googleも「AndroidとChromeOSは異なるものだ!」と言っていましたし、Chromebookタブレット的に使うということはおそらく考えていなかったのだろうと思います。最近はAndroidタブレットもあまり出回らなくなり*14、逆にその頃は大きすぎるとあまり人気のなかった10インチくらいのタブレットサイズが2-in-1PCとして復活しているんですかね。私はタブレットPCはちょっとした作業用から「人に見せる用」くらいまで幅広く使うのが好きで、Windowsで言えば出たころからのSurfaceシリーズのファンだったりします。

ASUS Chromebook C423NA

jp.store.asus.com

記事掲載時点では税抜き42,800円。これも直販モデルは売り切れなのかなぁ。スペック的にもCeleron N3350、メモリ4GB、ストレージ32GB、14インチ非タッチパネルという、あまり値段とスペックが釣り合ってない感がありますが、質実剛健なタイプのChromebookです。ASUSらしいというか、うーん、私がASUS好きなんですよね。

良くも悪くもChromebookらしいChromebook。初めてChromebookを買うならコレがいいんじゃないかな、というような典型的なスペック。自分が買うというよりも、どうしてもChromebookを買いたい、という人に薦めるならこれにしとけ、というようなマシンです。そのまま使えばChromebookの素晴らしさを感じられると思いますし、ちょっと冒険(カスタマイズ)をしてもこのスペックなら最初のうちは問題ないはずです。同じ価格帯のWindowsマシンは、というと、いわゆる「エントリーモデル」のマシンが並んでいるかと思います。Windowsマシンとしてはちょっと非力かな、という印象を受けるマシンが多く、この価格帯ならChromebookでもいいかも、またはChromebookの方がよいかもしれない、とは正直思います。

最後に:もう一度言いますが...

Chromebookは初心者にはおススメしません。

どうしても、というのであれば自分で調べて勉強をする、それこそGoogleの教えに従って「ggrks」と罵られることを良しとせず、ひたすら調べて独学で使いこなしたいという初心者であれば止めません。

ちょっとパソコンのことは知ってるし、時代はやっぱりクラウドだよね、と嘯きたければChromebookはおススメかもしれません。既存OSに比べればクラウドへの依存率は圧倒的に高いので、なんでもクラウドで完結させたい、というもの好き*15にもぜひ使っていただきたい(笑)。

ガジェット好きのオタク諸氏にとってはあまり旨味がなくなってしまったかな、というのは昔から使っていた私個人としての意見ですがどうでしょうね。実際のところ既存のOSもクラウドへの移行は進みつつありますし、ファイルをクラウドに置くことに違和感を持たない人も多くなったと思いますが、Chromebookがあったからこそ、というかGoogleクラウドファーストな考え方があったからこそ他社も追随していったのではないのかな、と思っていたりはします。だからこそChromeOSが既存のOSとの差別化が難しくなり、更にChromeOS自身がクラウドオリエンテッドOSからの脱却をするようになり*16、そこそこのスペックでなければ使えなくなったが故の高価格化が起こり、更に差別化できなくなっていった...。コンシューマー向けに売り出すことは容易になったけれど、オタク(マニア)向けではなくなっちゃったなぁ、と寂しい気持ちになってしまいました。

余談

本当に関係ない話ですが、最近狙っているのは初代Surface Goですね。中古でいい出物がないかどうか探してます。LenovoChromebook Duetを見ていて「雰囲気似てるよなぁ」と思い出したんです。ああいう感じのマシンを持ってるとおしゃれだなぁ、と思うんですよね。Macが嫌いではないですが*17、それこそどこぞのカフェに出向いてどちらを見てもリンゴマーク、という中で圧倒的にヒップなデザインのマシンに見えるし、質実剛健なビジネスシーンでも異彩を放つマシンですからね。本当に個人的な趣味な話で恐縮です...。

*1:下書きではかなり残っていましたが今公開するにはちょっと古すぎるネタのためボツにしています。

*2:Chromeboxはよ、と本当は私自身ツッコミたいのですが、あまり市場には出回ってないですからね。まだChromeboxはマニア向けなんでしょうか...。

*3:例えば新入学/新入社員などのPC買い替え・買い増しなどが見込まれるはずですわね。今年はコロナの影響もあってちょっと売る方も需要予測が立ちにくかったでしょうけれど...。

*4:それを中古で購入していたからさらに古くなっていて、OS側から「古すぎるんで今後はサポートしねぇぞ」というメッセージが出るようになったのが手放した大きな理由です。

*5:ストレージに関しては32~64GBと非常に少ないのですが、ファイルをローカル保存しないことが前提なので通常使用であればこれで十分になるわけです。私のような開発者が使う場合は、crostiniとかで仮想マシンを走らせるなど、どうしても内部ストレージを圧迫させるような使い方をするわけで、ちょっと非力すぎるかなぁ、と感じたりはします。

*6:使っているとわかるのですが、これは確かなメリットではあります。

*7:特にこじゃれた某チェーン店のカフェに出かければ何の意味があるのかわかりませんがリンゴマークのノートPCをドヤ顔で開いている人たちが大多数です。

*8:Playストア経由の「アプリ」インストールとChromeブラウザの機能拡張という2種類があるんです。

*9:ゲストモードで入ることはできますが、アプリをセットアップしても使えなくなったりするはずです。あくまでもゲスト扱いです。

*10:だからスペックが低くてもよかったし、値段も安かったわけです。

*11:言い換えると「安物買いの銭失い」でもいいやと思っているのかもしれないですが。

*12:MBA2020が10万ちょっと。高くなったなぁ...。

*13:イマドキの言い方をすると「バイカラー(Bi-Color)」ですかね。

*14:スマホ画面の巨大化がタブレット、特に7インチくらいのタブレットを衰退させたと言われてますよね。

*15:私のようなもの好きの方

*16:crostiniなんてクラウドオリエンテッドでもなんでもないですよね。ローカルにOSイメージ置かなきゃいけないんだから...。

*17:むしろ好きなほうですが...。