随分昔の記事で恐縮だが、何かの気の迷いでスティックPCを購入し、なんとか使い物にならないものか、と検討したことがある。
2023年の今現在もこのスティックPCは所有しているのだが、開発マシンとしても使っていないし、何なら電源を落としたままここ数年はほったらかしである。ただ、プラットフォームとしては面白いモノだとずっと思っていて、何かうまいこと使えないものかとずっと考えながら所有し続けている。
そこで、何かうまく使えそうなアイデアをいくつか考えてみたい。ただし、今回は実際に「やってみた」ではなく、若干妄想の入った設計レベルの話。書いてみて使えそうであれば時間のある時に少し挑戦してみたいと思う。
スペックのおさらい
前記事に価格.comのリンクを貼ってあるが、発売当時でもWindowsマシンとしてはわりと最低限のスペックで、かつ32bitOSしか使えないという、ホビーユースというかライトユーザー向けと言うか、のスペックである。
装置 | スペック | 備考 |
---|---|---|
CPU | Atom Z3735F | --- |
MEM | 2GB | 増設不可 |
GPU | Intel HD | --- |
ストレージ | 32GB | オンボードeMMC |
外部ポート | USB 2.0 x 2 | USB-A x1、MicroUSB x 1 |
通信 | IEEE802.11 b/g/n、Bluetooth 4.0 |
2013年ならともかく*1、2023年にこんな低スペックのマシンを持っていても使い物になるわけがない。もっと言えば、Windows10は2025年10月までのサポートであり、CPU的にもプラットフォーム的にもWin11の導入は無理なので、あと2年弱しか使えない。
また、「Win10がダメならLinuxでいいじゃない」という貴族なご指摘にしても、現行のLinuxディストロのほとんどが64bit化していて、2019年当時に64bitのLinux(Ubuntu)を導入できなかったこともあり、あまり期待できないような気はしている*2。
そうなると、後は二束三文で売り飛ばすしかない*3。が、私的にはあの形というか、省スペース化されたあの形は好きだし、(実用にはちょっと手を加える必要はあるが)テレビの裏側に置いておけるというメリットも捨てがたい。
となれば、そんな「ちいささ」を前面に押し出した使い方を考えてみればいいような気がしている。
アイデア1:レトロゲームコンソール
私自身はゲーマーでもないし、今でこそゲーミングスペックのPCを使ってはいるが、開発環境としてたまたまゲーミング環境がフィットしていることが理由であって*4、PCでゲームをゴリゴリとやっているわけではない。
ただ、子供の頃、小学生~中学生の頃であればファミコン→スーファミ、中学生~高校生の頃にはアーケードゲームが周りでも流行っていてよく遊んでいたということもあり、80~90年台のゲームはエミュレータを使ってたまに遊ぶことがある。
だとしたら、レトロゲーム用のコンソールとして生まれ変わらせることはできないか、と思うのだ。実はこのアイデアは最近思いついたもので、部屋の片付けをしていた時に転がっていたスティックPCを見て、「そういえばコレをそのままゲーム機にしちゃってもいいんじゃね?」と考えたのが始まり。
ついでに言うと、サブマシンとして使っているデスクトップPC(CHUWI GBOX)にも一時期レトロゲームエミュレータを入れていたこともあり、だったらテレビにつないでゲームしたらそれっぽいじゃん、とずっと思っていたので、このスティックPCをゲーム専用機にしてしまえばいいじゃん、ということにはなる。
考察①:レトロゲーム用途としての検討
そう考えてスペックを見直してみると、USBは2.0と旧規格ではあるものの一応外部端子として2口用意されている。そのうち1口はUSB-Aであり、少し古い外付けHDDであれば、ゲームデータ格納用に使えそうな気もしないでもない*5。コントローラなどの入出力装置に関しても、Bluetoothがあるのでそっちでつなげれば問題ないはずだ*6。
それと、何よりも画面出力がHDMIであることは、テレビに直接接続できるということを意味しており*7、昔のようにテレビでゲーム、というスタイルを踏襲できるのはレトロゲーム好きとしてはワクワクしてしまう。音もテレビからの出力であれば問題ないし、むしろファミコン/スーファミのゲームならテレビから音が出る方が「それっぽい」だろう。
ハードウェア的に気になる点があるとすれば、サーマルスロットリング機能があり、CPUが熱を持つと徐々に動作スピードが落ちるという特性と、メモリの少なさ、と言ったところだろうが、スーファミレベルであれば問題ないような気もするし*8、アーケードゲームは若干グラフィック性能的にどうかな、とは思う程度だろうか。
また、ソフトウェア的には、OSをWindowsとすることを前提にするなら、完全にマシンの「キオスク化」をしてしまえばいい。つまり、WindowsとしてOSは起動させるが、エミュレータソフト以外は起動できないようにするという方法*9で余計なアプリケーションを起動させないようにすれば、動作も重くならないだろうことは考えられる。
考察②:非レトロゲーム用途としての検討
ゲーム専用として使えるのであれば、最近のオンライン系ゲーム端末、例えばSteamOSあたりを導入する、ということも検討できるかな、と思うわけだが、これはスペックの関係上無理である。一番大きな難点はやはりGPUだろう。イマドキのゲームをやるのであれば、どうしてもそこそこのスペックのGPU/CPUが必要になるし、仮にギリギリスペックがスティックPCで足りていたとしても、次に問題になるのは放熱の問題だろう*10。
スティックPCの仕組み上、プロセッサと本体カバーは熱伝導体(いわゆるサーマルシート)で接触していて、プロセッサの熱を本体カバー側に逃がすことになっている。そうなると、ゲームでCPU/GPUをガンガン使って熱を放出させたいのだから、本体は猛烈に熱くなってしまうはずだし、冷やさなければCPU/GPUは動かなくなってしまう(それを防ぐためのサーマルスロットリングだが、当然動作周波数が下がればスペックが低くなることと同じなわけで、動作がカクカクでは済まなくなるはずだ)。
どこまでを「非レトロ」と言うかは別にして、CPUやGPUが同じくらいのスペックのコンソール向けゲームでなければ動かないと考えるのが筋だろう*11。
アイデア2:NAS
これはこの記事を書きながら考えたアイデアだが、NASとして使うことはできないものか、とは思う。現在自宅(一応「仕事場」)にもNASが備え付けてあり、ファイルサーバ代わりに使っているのだが、かなり古く、ファームウェアも更新されていないため、使用にあたっての問題がいくつか発生している。
一番大きな問題は、SMB/CIFSである。CIFSと書いてあることからもお気づきの通り、SMBプロトコルとしては古い、v1にしか対応していないのである。
我が家はWindowがメインマシンだが、Win10あたりからSMBv1はデフォルトでは使えなくなっているし、Macも同様にOSが新しくなればなるほど使えなくなっている。Windowsに関しては設定でまだSMBv1を使わせることはできるが、新たに導入したマシンにわざわざSMBv1を使わせるよう設定をしなくてはならないのも面倒であるし、持ち出し用のPCや他社から貸与されたマシンなどに設定をするのもセキュリティ上問題がある。
Macに関しては、NASがAFP(Apple[Talk] Filing Protocol)対応していることもあって、AFP接続で対応はしているものの、今さらAFPですか*12、とも思うわけで、現行SMBを導入した方がいろいろと管理上は楽なのにな、と思っている。
そう考えると、有休マシンの再利用先としてありがちなNAS的な使い方を検討するのもアリ、という気はしないでもない。
考察①:単純な「ファイルサーバ」としての検討
では、単純にWindowsマシン(であるスティックPC)を「ファイルサーバ」として使うことを想定してみると、OSの入れ替えをしないことを前提にするなら、USB端子はあるのだから外付けHDDをつなげてそのドライブごとネットワーク共有すればいい。
我が家のマシンがWindowsで統一されていればこれで問題は解決するのだが、Macも使っているのでこれでは問題がある。NTFSドライブの共有になってしまうわけで、Mac側からはこのドライブには書き込みができなくなってしまう(確か)。
もう一つの問題、と言うか、そもそも私がNASを買った大きな理由なのだが、HDDはRAID(1/ミラーリング)で二重化されていて、データが消えないような仕組みを作っている。外付けHDDをつなげるだけだとそれができない。前述のように、一応「仕事場」での利用であり、顧客データを預かっていたりすることもあるため、ディスクの破損等によるデータ紛失は問題になるのだ。
もちろん、Windows(10以降?)でも複数のハードディスクを使ってRAIDディスクを組むことはできるが、いわゆる「ソフトウェアRAID」というヤツで、私的にはあまり「信用していない」と言うか、ソフトウェアによるRAIDはソフトウェア、この場合はOSそのものになるが、その不具合によってデータ復旧ができなくなる可能性も否定できない。そもそもNASなどのハードウェアRAIDの利点であるホットスワップができない。
考察②:NASとしての検討
ファイルサーバとしての問題点としてRAIDの仕組みのところまで話を広げてしまっているが、そうなると結局のところ、ハードウェアRAIDに対応したHDDケースを調達する必要がある。それにOSのみのハードウェアがくっついている、というイメージであれば、おそらく想定しているファイルサーバとしての使い方ができるような気がしてくる。
こうなると、OSすらWindowsである必要もなく、いわゆる「NAS専用OS」の導入が視野に入ってくる。しかし、少し調べてみると、NAS用OSとして有名だった「FreeNAS」は、現在「TrueNAS」と名称が変わり、OS自体も64bit化しているらしい*13。
結局ここでも32bitOSの問題が出てくる。
OSを入れ替えずに、ハードウェアRAIDを組んだディスクを外付けHDDとして認識させてファイルサーバとして共有する、と言うのが現実解という気もするし、
もう少し実務的に考える
今どき誰が好き好んでスティックPCなんぞを使うのか、と思うが、業務用として考えるなら、単機能の(≒キオスク端末としての)使い方しか考えられない。一時期(ギーク界隈で)流行った「スマートミラー」のコントロール部分とか、IoTコントロール端末とか。IoT端末そのものとして使うこともできなくはないだろう*14。
シンクライアントという手もありそうだが、少なくとも我が家には現状必要のないものなので、これも現実的な解とは言い難い。シンクラとして生まれ変わらせたとしても、持ち運びには確かに便利ではあるが意義は感じない。入出力デバイスは結局持ち歩かなければいけないのでそれ込みでの「持ち運び」は圧倒的に不便だ。
2019年当時使っていた用途として、低スペックPCでの動作テストをスティックPCで行っていたので、同じような用途も考えられるが、現在の業務では必要がない(だからこそ使われずに放置されていたのだ)。そもそも、10年近く前の、しかも当時ですらロースペックを謳っているようなPCを現役で使っていて、動作確認をする必要がある、というようなクライアントがいたとしたら、そんな金を出すくらいならいいPC買えよ、と言いたくなる。
いずれにせよ、〇〇サーバ、みたいな、メインでは使わないけれど任意のタイミングでデータを取り出せるような仕組みでしか再生させる方法はなさそうですなぁ...。
*1:ちなみにCPUの発売は2014年
*2:ただしCPU自体は64bit対応なので、なぜOSが32bitしか受け付けなかったのかは当時からの謎ではある
*3:メルカリでは4,000~6,000円くらいの価格レンジで売りに出ているみたいだが、果たして買う人がいるんだろうか...
*4:だからと言うわけではないがGPUスペックはいつも低めのものを使っている
*5:スペック表には書いてないが、MicroSDスロットも1口用意されているのでそれもストレージとしては使えそう
*6:レトロゲーム用であることも考えれば入力遅延的なことは考える必要もないはずだから
*7:実際にテレビに接続すると若干オーバースキャンしてしまうので、テレビ側でも調整が必要だったりはする
*8:プロセッサがまだメガヘルツで動作していた頃なので
*9:Windows10のキオスクモードを使う
*10:どんな用途にするにせよこの放熱問題は付いて回るはずだが
*11:動作クロックだけで考えればPS2くらいまでだろうか。十分レトロゲーム感満載ではあるが
*13:32bit版は名称が変わる前の旧バージョンが最終版らしい