「プロ」論

先日お客さまとの会話で、「プロ」とは、という話が少し出てきた。

私自身「プロ」と名乗って商売をしているが、それなりのコダワリをもって「プロ」と名乗り、仕事をしている。

今まで見てきた「プロ」も含め、自分の中にある「プロ」魂を僭越ながら披露してみたい。

「プロ」ってなんだ

そもそも「プロ」ってどういう定義なのか。

辞書的な意味を言えば、仕事をしてその収入で生計を立てている、ということになる(プロフェッショナルの略語)。

仕事、と言ってもその仕事が専門職であること、そして生計が立てられていること、が条件になるのだろうが、まぁ、「仕事でメシ食っている」と言えるならそれが「プロ」なんだろう。

ブログで自分の稼ぎを公開しているので、人それぞれだとは思うがまぁ「コイツはメシを食っていけているのだろう」と思ってはもらえる気はしているし、事実なんとかなっている。

メシが食える(ほど稼げている)ということは、それだけ仕事がきちんとできる、ということにもつながる。

仕事を受けたらそれを終わらせ、報酬を受け取る必要があるわけで、仕事が終わらないとか、報酬がない仕事をしたりとか*1、それはプロのやり方とは言えないし、仕事が仮に完遂できたとしても、それが次につながらないのようではプロとはいいがたい。

なぜ「プロ」と名乗っているのか

私自身の中で、「プロ」と名乗っていいかな、と思えるようになったのはここ数年のことで、それまではただのフリーランスでしかなかった*2

単純にメシを食っていけるようになった、と言うのも「プロ」を名乗ることができるようになった一つの、そして大きな要因ではある。

それ以外にも、お客さまとのつながりが長く保てたりするようになったことも要因の一つだろうし、スキル面においても表に出して恥ずかしくない程度のレベルに達しただろうこと*3もある。

お客さまとのつながり

メシを食っていくためには、ずっと仕事をし続け(て金を稼が)なければいけない。仕事ができなくなってしまう将来のことはとりあえず置いておくとして、まずは日銭を稼ぐことを考えれば、お客さまがどうしても必要になる。

イマドキの「ギグワーク」的な考え方は、日銭を稼ぐために必要なのは「仕事」ということになると思っている。そこにある「仕事」を完遂させて報酬を得る、という考え方である。

www.shopify.com

この考え方が正しいかどうかの議論はあると思うが、ギグワークの例として挙げられるUberEatsの配達業務を考えれば、彼らはどのお客様(配達を依頼される方・届ける方)であるか、を考えることなく、配達することのみにおいて報酬を得ている。

私がやっていることは「仕事」においてだけではなく、その仕事を依頼してきた顧客、そして仕事の成果物を使う誰かに対しても責任を持っている、と理解をしている。

お客さまに信頼してもらえるから仕事がもらえる、という仕組みだ。「当たり前」と思う人も多いだろうが、ギグワークとの対比をすればイマドキの考えとは異なるのね、と思ってもらえるだろう。

大切にしているのはお客様との信頼関係であり、その信頼関係が壊れてしまえばお客様が離れていくし、壊さないように仕事をしなくては、と思えるようになったのもやはり最近のことだったりする。

スキル面の向上

長くITエンジニアの仕事を続けていて、コーディングやマネジメントの経験も増えてきた。仕事も継続的に頂けるようになれば当然経験する機会も増えてくる。

ただ与えられた仕事をこなすだけではその経験も活きないし、いろんな状況の中で行う仕事を進めるうえで得られる気付きや学びを整理していたりもしていた。

ブログはその一助になっている。投稿できないネタもたくさん抱えている、と言う話もたまにすることがあるが、ほとんどが気付き・学びの内容だったりする、というくらい、得られた知見をどこかにまとめて書き溜める習慣がいつの間にかできていた。

残念ながら、私自身失敗から学ぶことの方が多いし、同じ轍を踏むまいと思いつつも何度か「ヤラかす」ことがあるので、本当に学んでいるのか、と言う疑念は自分の中では晴れていないのだけれど、それでもなんとか切り抜けられるようになってきた。

技術面においても基本的には同じで、コードを書けば書くほどバグは増えるわけで、そのバグ潰しの過程でコーディング技術も向上するし、システムやプラットフォームに対する知見も深まり、コーディングの精度が高くなっていく、と考えている。

あまり客観的に見ていないので「お前なんてまだまだよ」とか「底辺レベルに毛が生えた程度だよ」と他人からは思われるのかもしれないけれど。

「プロ」に大切なもう一つの要素

ここまでで挙げた、私自身が考えている要素をおさらいしておく。

  • メシが食える
  • お客さまとのつながり(信頼関係)が築けている
  • 一定の(高い)スキルレベルを持っている

独りよがりな「プロ」だなぁ、と思うが、最近気づいたもう一つの大切な要素がある。

相手を喜ばせることができる」ことだ。

敢えて言えば、お客さまとの信頼関係に関わることだと思うのだが、意外とこの要素がなくてもお客さまとの信頼関係は築けたりする。

納期であったり費用感であったり、お客様にとっての「信頼」は必ずしも「喜び」という主観だけに基づくものではないと思っていて、悪く言えば『卒なく仕事をこなす』だけでも十分お客様にとっては信頼に値するモノだと思っている。

だが、卒なく仕事をするだけではお客さまにとってのメリットは限られてくる。納期を守ることは当然としても、費用感が安くてそこそこの仕事をする、というだけではあまり次に期待ができない、と思われてしまうかもしれない。

仕様書の行間を読めるか

ITエンジニア的に言うと、「仕様書」にはプログラムの仕様が記載されているのだが、逆に言い換えれば、「仕様書に記載されていないことを実装してはいけない」ということになる。

コーディングの研修などで口を酸っぱくして教えていることでもあるのだが、仕様書は絶対であり、記載されている内容に疑念を持つことは許されない、と、新人のエンジニアには教えるようにしている。

だから「仕様書」に行間など存在し得ない、と言い切りたいところなのだが、実際には考慮漏れであったり表記方法による解釈のあいまいさなど、人が作る書類には「ツッコミどころ」がたくさんあったりする。

その「ツッコミどころ」をツッコめるかどうかによってお客さまが喜ぶかどうかにつながるような気はしている。

例えば、ログイン画面を作るときに、ログインに失敗する場合にメッセージを表示させるという機能を作る場合、仕様書上はIDとパスワードの組み合わせが間違っている場合にメッセージを表示させる、と記載されていたとする。

サーバ(DB)に問い合わせをし、IDとパスワードの組み合わせが一致していなければエラー、という流れになるはずだが、これだけで本当にいいのか。

例えば、ID文字列の要件がメールアドレス形式であった場合に「@」が入っていない文字列を入力した際に「ID文字列が異なる」というメッセージを出した方がいいのではないか*4

こういった提案を行うことでお客さまが「喜ぶ」ことが多い*5

これができるかできないか、というのも「プロ」かどうかの見分けどころかな。

「言われた通りにやるのがプロ」ではない?

もちろん、言われた通りにやることも「プロ」の要素だと思っているが、私の中ではそれは「プロ」としての最低ラインだとも思っている。最低限それはできて当たり前だし、その程度では、と最近は感じていたりする。

クラウドソーシングサービスを揶揄するつもりはないのだが、クラウドソーシングサービスのプロフィール欄を見ると、だいたいこんなことが書いてある。

納期を守ることはもちろん、丁寧なコミュニケーションを心がけております。

ご連絡いただければ、すぐに対応できる態勢を整えておりますので、どうぞよろしくお願いします。

ちなみにコレ、クラウドワークスのプロフィールテンプレの文言なのだが、「こんなの書かなくても当然じゃね?」と正直思ってしまう。

「お客様のご希望に沿って」「デリバリーは迅速」「丁寧な仕事」って、できて当然、できなきゃフリーランスとして失格、くらい言いたくなる*6

お客さまの求めている以上のモノを提供できるのがフリーランスだし*7、「プロ」なんじゃなかろうか、とすら思う。

ITエンジニアとしての「仕様書」の考え方からはかなり逸脱してしまうのだが、仕様書通りに作ったとしても考慮漏れがあったりすれば、お客さまは納品物を使ったところで満足できないわけだ。仕様書を作った方が悪い(問題がある)としても、それに気付けずにモノを作ってしまうエンジニアに対して「この人は気付いてもらえないんだ」と思ってしまうはずだ。

いわゆる『お役所仕事』なやり方は、あっていいけれど自分の仕事スタイルとしては好みではない。わりと仕様書に口は出すし、そうすることがより良いモノをデリバリーできると考えれば、お客さまとコミュニケーションをすることにもなるし悪い方向には転がらないよね、と今までの経験で感じている。

考え方は人それぞれだが…

異論反論はあって当然だし、そもそも「おまいう(お前が言うな)」と言う批判もありそうだが、少なくとも私見としては「プロ」ってそんな感じなんじゃないのかな、と思う。

余談だが、業界によっても「プロ」の考え方っていろいろあると思っている。例えばプロのスポーツ選手はどちらかと言えば私の考えている「プロ」に近いような気はしている*8

もちろんすべてのプロスポーツ選手がそうだ、とは言わない。スキルが高いのは当たり前としても、「お客さまを喜ばせる」ということが苦手な人もいるだろうし、考え方として「結果を残すことこそ至上」と思う人だって多い気もする。

もう一つ、どちらかと言えば私が影響を受けている「プロ」としてプロミュージシャンを例として挙げておきたい*9

エンターテイメントの世界においては、「お客さまを喜ばせる」ことは重要な要素だと思うが、ただそれだけではプロとしてはダメで、高いスキル、楽器の演奏スキルや作曲のスキルを持ち、お客さまであるリスナーやファンとのつながりもきちんとできてこそ「プロ」なんだろうな、と思う。

敢えてミュージシャンの名前を挙げるとすればTOTOだろうか。

ja.wikipedia.org

各メンバーがスタジオミュージシャン(これも「プロ」の仕事)をする一方で、バンドとして自身の曲を作り演奏し、お客さまを楽しませることができる。これぞプロのなせる業、とでも言うべきなのでは。

www.youtube.com

*1:除くプロボノ

*2:フリーランスという呼称はプロとは異なる概念だと思っている

*3:そのスキルを客観的に測ることはできないけれど

*4:パスワードの最小文字数なども同じだが、最近はセキュリティ対策のためにID/パスワードの文字列を推測させないようにしたいという要望もあったりするので注意は必要

*5:ちなみに上記の例はあまり喜ばれなかったりするが、ツッコミどころという観点では割とありがちなパターン

*6:私はどうかって?若干微妙な点があるかなw

*7:誤解を恐れずに言えばそれを提供可能なのがフリーランス、求めている通りのモノを出すのが大手、と思っていたりする

*8:私が影響を受けていないわけではない、とも言っておく

*9:誰か特定の人がいて影響を受けているということではない