小ネタ:出張を取りやめた理由

緊急事態宣言発令中のため、今週末(4/18~19)に予定していた福島出張を無期限延期することでクライアントさんと調整、先さまにもご理解をいただきました。

予定も3月の最終週、そろそろヤバいんでないの?という頃に決まった話ではあったのですが、家族(具体的にはヨメ)は4月に入ったあたりから訪問することに難色を示し始めていました。ただ、私の中では出かけるべき理由と出かけてはいけない理由がずっとせめぎ合っていて、ようやく直前になって結論が出て遅まきながら連絡をした、という、あまりよろしくない対応をしてしまったのですが、この状況というか決定に至るまでのプロセスは自分にとっては興味深く、「働き方」という点でも考え方の推移として参考になるかもしれないと考えて、葛藤の記録として残しておこうと思いました。

前提①:「仕事による出張」は不要不急の用なのか?

緊急事態宣言が出ている現時点では、「出張」はどちらかというとNGに近い扱いを受けているようです。特に、宿泊を伴う出張についての禁止を謳っているケースもあったりしますが、それでもやはり出張は『仕事の一環』であり、どうしてもその日でなければならないという事情があれば、やむを得ず出張を認めるという例外措置になってしまうだろう、と推測をされます。

確かに強制はしにくいですよね。今回のケースで言えば、先方との日程調整がタイトであったこともあり、どうしても4月はこのタイミングでしか訪問することができず、それ以降のスケジュールも6月までほぼ埋まっている関係で、「今を逃すといつ行けるかわからない」という状況だったので、この出張が「不要不急ではない」、と判断するのは仕方ないことだと思っています*1

前提②:自分自身の健康状態は?

仮に出張をする場合、自分自身が保菌者と思われる場合は当然出張してしまうことにより他者への感染を広げてしまうので問題があるわけですが、私の場合は、健康であり、かつそもそも他者との接触機会が大変少ない仕事をしているため、感染や保菌を疑う要素はほぼないと言っていいわけです。

この数週間でいろんな論説を見聞きしましたが、どうやらこの考え方は『男性的』であり、『古い(オールドファッションな)』考え方のようです。自分は感染していないし、感染することもない(ほど健康に気を付けている)、というのは、科学的なエビデンスがあるわけでもなく(逆に保菌者/感染者は必ず高熱にうなされるわけでもなければ味覚や嗅覚に障害が発生するわけでもない、というエビデンスはありますが)、そう考えやすいのは男性が多いというのも、男性=強い、という考えから来るものだ、と言われています。

前提③:感染エリアを細かく見れば大丈夫?

よくSF系の映画やなにかで、感染するエリアが地図上で赤く徐々に浸食されていくようなイメージは結構持っている方が多いのではないかとは思うのですが*2、実際に感染が確認された地域はどこでもアウト、ということではなく、感染エリアが面で(≒特定の市区町村全体で)ある、というわけではないということは、なんとなく認識できるのではないかな、と思います。

そうは言っても、やはり感染が深刻なエリアであれば訪問することは憚られるだろうし、逆に感染者がいないエリアであれば、自分が訪問することによって自分が感染する可能性は低いだろう、という考え方もできるだろうと思います。

結論を出した経緯

前提として上に挙げたこと、基本的にはほぼほぼ思い込みのレベルで、科学的根拠には随分欠けるものだとは思っていますが、それでも、これだけの前提があれば(そして前提があったが故に)結論をギリギリまで出せずにいたわけです。

前提を覆す根拠

前提を覆すための客観的根拠。これが意外と見つかりません。本当に意外です。ですが、いくつか懸念することはありました。

懸念:出張の可否について

出張の可否については、上述の通り、「基本的にはNG」という扱いですが、仕事という性質上、どうしても例外措置が発生しやすく、更に言えば仕事の責任を果たすという観点から見ても、もしくは仕事というパフォーマンスという観点で見ても、『こんな大変な状況なのに時間を割いてリスクを冒してまで出張をしてくれた』という言い方/言われ方はされてしまいがちだと思います。

ただ、そこには忖度というか気遣いと言うか、もしくは若干の皮肉を込めて、「なんでこんな時期にきやがった?」という意味として言われている可能性は否定できないです。

懸念:自分が健康であるということ

これは覆しようがないのですが、今感染していない、または感染の兆候が見られないという状況では、自分が健康であるだろうと推測をするしかないわけです。同じように、クライアントなどの相手側からも、まだ感染したという報告も受けていないわけで、出張に関わる人たちが感染していないという状態であれば、これは出かけることを止める理由にはならないわけです。

ただし、今回の出張の目的に「視察」があり、不特定多数の人たちと話をする可能性があったことで、接触する人たちのうち誰かが感染しているかも、という疑いはありました。

懸念:感染エリアの「見方」

マクロで見るべきなのか、ミクロで見るのか、ということも考えていたのですが、これはむしろ広範な(マクロな)感染エリアでの増加傾向を参考にしました。実は福島県内、特に中通りエリアですが、感染者数が増えているという傾向がありました。訪問エリアは浜通り(相双)ですが、宿泊をどのあたりにするかを考えるうえで、中通り、特に県北地域(福島市を中心としたエリア)での宿泊の可能性があることを考えると、宿泊がリスクになるかもしれない、という可能性はありました。

最大の理由:疑心暗鬼(他→自)

それよりも気にしたい、そして延期した一番の理由が、緊急事態宣言が発令されているエリアからそうでないエリアへの訪問をする、という行動そのものが先方クライアントや訪問先関係者にどのように映るか、という点でした。

奇しくも同じ福島県内のある地域(会津のどこかの市町村だと記憶しています)で、緊急事態宣言エリアに限らず、市町村外からの帰省や冠婚葬祭の集まり事などの自粛を要請したというニュースを目にして、知らない人が街にいたら「ヤツは保菌者でねぇのか」と疑心暗鬼になってしまうだろうな、と考えました。

出張の懸念について論じたところでも述べたように、こういう時期なのになぜ来ているのだろうかと訝しがられてしまうわけです。これは仕事として考えると、今自分の仕事を遂行するという点だけでは「仕方のない(不要不急ではない)」行動ですが、今後の業務継続性という点ではあまり信用に値しないと判断されてしまうと思います。

結論を出した結論

結局のところは他人にどう思われるか(見られるか)というところを重視した感じになりますが、特に仕事であるという点で言えば、自分一人で仕事をしているわけではなく、他者とのつながりがあって、ですので、そういう視点は大切ではあると思います。

自分が感染していないんだから、または感染しても自分の行動範囲は狭いし人との接触も限定的だからむやみには広がらないだろう、と思っている人は今でも一定数いるのだとは思います。それこそSNSなどでいろんな書き込みを見聞きしますが、「いまそれ?」という行動をしている人がいるところを見ると、悩んだのかな、悩んだけれど結局他人のことは見えてなかったかな、と思ったりはします。

逆に他の聡明な方たちにしてみたら、私の結論の出し方はあまりにもひどすぎるし遅すぎる、と感じられるかもしれませんが、世の中の人たちはこうやって葛藤しているのだ、と一笑に付していただければ幸いでございます。

*1:ちなみにこの出張は不要不急ではないという判断自体は今も変わっておらず、それ以外の理由が出張取りやめの要因です。

*2:というか、おそらくそういうイメージがあるから、緊急事態宣言区域外に出れば何をしても大丈夫、的な考え(≒コロナ疎開)が起こっているのではないのかと邪推をしているわけですが。